まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

そろそろ複線というか設定さんがちらほらと出てきました。
初期の敵さん?の概要がちらっと見えかけてますv
敵さんが動き出したら天界、魔界とついでに精霊界。
まじりまじっての大混乱?になる予定v
何はともあれいくのですv

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「…やつが消滅した?」
かなり力あるやつを送り込んだはずだとおもったが。
その意見に思わず耳を疑ってしまう。
「人間はそこまで力をつけているのか?」
「いや、気配からして精霊達がかかわったらしい」
「…ちっ。忌々しい精霊どもが」
彼らが動かなければ自分達のもくろみは達成される、というのに。
そもそも、それぞれの界にわかれて各自が管理しているなどとぬるすぎる。
一つの種族がすべての世界を治めてこそ正しき姿になろう、というもの。
「まあいい。いずれは我がショゴスがすべての界を支配するには変わりない」
「御意」
闇の中、低く重苦しい声がしばし姿もないまま紡がれてゆく……


光と闇の楔 ~【門外】よりきたる者達?~

「まったく……」
目の前に横たわる物言わぬ塊。
すっと手をふるとその塊は瞬く間にと炎に包まれ、後には何事もなかったかのような床がその場にあらわれる。
「毎回、毎回、あなた達は何をやっているのですかね?いくら温厚な王とて考えますよ?」
それは本音。
さらり、と金の髪が風もないのにたなびく。
金色の髪に金色の瞳。
その容姿は見ただけですくんでしまうほどに整っているがどこか威圧感がただよっている。
「しかし…ルシファー様……」
「しかし、も何もありません。今度きちんと職務をこなさなかったら降格、ですからね」
「・・・・はい・・・・」
降格。
それは彼らにとってもっとくも屈辱的なこと。
しかし手をわずらわせてしまった以上、それも仕方がないのかもしれない。
そもそも、補佐官である彼女を出してしまったことこそが彼らにとっては敗北にあたる。
「では、私はこれで。まだ仕事がのこっていますので」
それだけいってその場からかき消える。
「…さすが、我らが王の信頼を一身ににない、補佐をされているだけのことはある……」
非情なまでに容赦せずに、有無をいわさず無に還す。
「我らも見習わなくては……」
その場にいたすべてのものがそのつぶやきに思わず同意する。
彼らの王の治世をよりよく導いてゆくためにはどうしても力、は必要なのだから。

「は~……表裏一体、とはいえ、こっちもこっちで……」
おもわずうんざりした言葉を漏らしてしまうのは仕方がないであろう。
絶対に。
「ティア様?」
「何でもない。それより、きちんと職務はこなしてもらわないと困ります。
  というかここまで反旗メンバーに入り込まれる体勢に問題ありまくりでしょう?」
目の前にはすでにびくり、ともうごかない人影がいくつか存在しているが。
それらはすべて光の拘束によってしばられている。
「ほんと、あまりにひどいと全員、降格して入れ替えもありえますからね」
それは本音。
その言葉にその場にいる全員がぴくり、と反応する。
「は~…、ま、私はまだ仕事がありますから。それでは後の始末はあなた達にまかせますからね。
  い・い・で・す・ね?ゼウス」
「はっ。お手数をおかけいたしました」
「ほんとにね~」
あちらにしろ、こちらにしろ。
表裏一体、とはよくいったもの。
ほぼ同じようにコトを起こすなど、申しあわせたわけでもないというのに。
「それで、補佐官ティア様。王には、何と……」
「まあ、それはあなた達の今後の働きによるわね」
そもそもわざわざ説明する必要などはないのだが、それはあえていわないでおく。
そのまま固まる彼らをそのままにその場をあとにしてゆく黒い髪に黒い瞳の少女が一人……

「う~ん、なんだかね~」
ふと先日の出来事を思い出した。
それゆえにおもわずそんなことをつぶやくディア。
呼び名は様々。
今名乗っている名前も一つにすぎない。
それらのこともあり出てきたのもある。
昨日のキマイラ出現。
それはこの王都を今現在、騒がしていたりする。
原因が判明するまでは一人で行動しないように、と国からお達しがでている始末。
「ショゴスとホテップ、同時に行動開始してるみたいだし……」
まあそれはそれで手間が省ける、というべきか。
それをうけてどちらの世界もあわただしく動きだしているらしい。
ここは彼らに動いてもらいせっかくだから各界にも危機感をもってもらい連帯感を強めてもらうのも一つの手。
どちらにしても、彼らがここ、テミス王国を視野にいれているのは疑いようがない。
理由は単純。
この国は光の主神を仰いでいる。
光への希望が強ければ強いほど、絶望したときの闇はより濃くなる。
光と闇は表裏一体。
ゆえに少しでも力をつけるためにとより強い光を闇に変化させようと彼らは頑張っている。
もう片方にいたっては、闇を光にかえようと頑張っているのだが。
どっちもどっち、とはディアの意見。
まあ、その内情をしればおそらくはほとんどの存在達が同じような思いを抱くであろう。
「って、きいてるの!?ディアさん!?」
「え?あ、ごめん。何だっけ?」
「…もう……」
昨日のキマイラの一件について話し合っていた。
何しろ堕ちた存在を目の当たりにするなど一生に一度あるかないか、という経験。
まず出会えばまちがいなく死に至る。
そんな状況だったというのに生還したのは、目の前にいるディアの力ゆえだ、と彼らは理解している。
だからこそ登校してきたディアを教室にて待ち構え質問攻めにしている生徒達。
「もう。それで、いったい何がどうなったわけ?ディアさんが何かした、というのは何となくわかるんだけど」
何やら外をみつつ意味のわからないことをつぶやいていたが、その意味は彼らには判らない。
「別にどうってことないわよ。ただ、あるべき姿に還るようにしただけよ」
そう。
あの個体はあるべき姿に戻して還した。
魂はあのまま輪廻の輪にもどり、新たな生へと赴く。
気になるのはそれから読み取った知識のこと。
何を考えているのか『彼』を利用して子供たちを動かそうとしている節があるらしい。
そんなことをすれば自分達の首をしめるだけ、というのにも気づいていない、というのが情けなくもある。
「あるべき姿って……」
「本来、命は目的をもって産まれてるから。そのあるがままの姿にもどしただけよ。
  …この世界に命をうける、というのは必ず意味があるのよ?」
そのように【設定】した。
魂達がよりたかくその高みにゆけるように。
から~ん…から~ん……
「あ、鐘がなったわよ。はいはい。皆席につかないと」
根柢の理から説明してもいいが、おそらくそれをいっても理解不能であろう。
それに何よりどうしてそこまで詳しいのか、と疑われても面倒なことになる。
ゆえに鐘がなったのをうけていまだに何か聞きたそうなクラスメート達に対してかるく手をたたき、
それぞれ席につくようにうながしておく。
と。
がらっ。
「みなさん、今日は自習といたします。…あ、ディアさん、すいませんがディアさんはちょっときてください」
「はい」
クラス担任のヘスティアが入ってきて、クラスを見渡しつつも席につくようにうながし、
本日の授業が自習になったことを告げてそのまま教室を後にしようとし、
扉をくぐる直前にディアにと声をかけてくる。
ディアとしても別に断る理由はない。
というか一緒にいったほうがクラスメート達の追求から逃れられる。
ゆえに素直にそのまま、ヘスティアについてゆくことに。

「……あ、あの、先生?」
おもわず素直についてきたはいいものの、いったいこれはどういうことなんだろう。
何だかおもいっきりどこかでみたことがあるような気がする。
もうひしひしと。
連れてこられた場所はなぜか王城の一角で、さらにそこにずらっと長ったらしい机がいくつも並べられており。
そしてその正面にどうみてもこの国の確か皇子らしき姿が見て取れるのは気のせいか。
よくよくみれば今現在の各ギルド協会の長達もこの場に出向いてきているらしい。
ディアが彼らを知っている、というのはあまりに不自然なのでそれを顔には微塵にもださないが、
それでもどうしてこのような場に自分がつれてこられるのやら。
ものすごく気になることにこの王都の神官長までいたりするのがかなり気になる。
…たしか、ホルスとの邂逅どきにたまたま顔合わせした記憶がおもいっきりある。
…願わくばまだあのときは彼は見習いだったので忘れてくれていることを願うばかり。
まあ、あのときと髪と瞳の色が異なるのでそうそう判りはしないではあろうが。
「すいません。おそくなりました。昨日の一件に一番詳しい生徒をお連れしました」
「いや、先生、私も詳しくないですけど……」
というかそういうことにしてはいる。
ゆえにヘスティアの台詞に思わず突っ込みをいれるディア。
「ごくろう。ヘスティア=アルクメーネ氏。みなさん、とりあえずそちらの子が先ほど説明した生徒です」
ギルド長がその場にいる全員をみわたしそんなことをいってくる。
ちなみにギルド長はぱっとみため、どこにでもいるような年配の男性。
ギルドの長は数年に一度ある各長達の議会において多数決にて決められる。
「ティアさん。とりあえずあなたはそこに座ってください」
「は…はぁ……」
なんかこういう会議はおもいっきりひさしぶりだな……
顔ぶれからしてもそんなことをふとおもってしまうディアはかなり余裕がある。
普通ならばいきなり王城につれてこられ、さらには重鎮らしき人々が集まっている最中、
どうみても重要会議っぽい場にひっぱりだされれば混乱し取り乱しても不思議ではない。
しかしディアには担任の言葉に突っ込みをいれる余裕すらあったりする。
普通ならばありえない。
そのような教育をうけている存在ならば話しは別だが。
ディアが席につき、その横にヘスティアが並んで座る。
「さて、これで一応全員そろったわけだ。…では、今わかっている報告を」
「はっ!王都警備主任今現在の報告をこれに」
「は!」
皇子の横にいる人物はおそらくこの国の国王であろう。
その人物が全員をみわたし会話を促す。
そしてその人物を補佐するように会話を促す様子からみても、今声をはっしたのはおそらくこの国の宰相。
…まさか、ティミまで呼ばないでしょうね……
思わずこの面子をみてディアは内心顔をしかめる。
王都を守護している守護精霊のティミがこの場に出向いてきた場合。
ついうっかりと彼女が口を滑らす割合は…かなり高い。
まあそうなったらその部分の記憶を少しばかりいじるつもりではあるが。
「先日、ギルド協会よりの報告をうけまして【界の歪み】が発生したことが判明しました。
  その場所は今では精霊達のおかげで閉じられてはいますが、王都の近くに発生した。
  この事実が何よりも重要でありまして、目下、天界などにも確認中です」
地界における歪みは他の界においても管理している。
「魔界のほうからの連絡は?」
「つい先ほど、報告がはいりました。
  何でも世界の在り方に反旗を唱えている組織が無理やり行った可能性が高い、とのことです。
  かの組織のことは彼らも把握してはいますが完全な証拠がつかめずに手をこまねいているそうです」
彼らはその信念のもとに行動している。
その思いにはまったくもって邪念はない。
それこそが正しい、と思い込んでいるのだからタチがわるい。
それを知ってはいるがこの場で口をはさめば間違いなく目立つ。
というか一生徒にしか過ぎないディアがしっているのはかなりおかしい。
ゆえにただ傍観者に徹するディア。
「魔界警備隊よりの連絡ですと、彼らはどうも地界への進出を図っている節がある、とのことです。
  すでにいくつかの国に彼らの間者が送り込まれている可能性も否めない、そうです」
事実、うまく上層部にはいりこみ、戦争を引き起こそうとしている勢力もある。
「ふむ。さいきんの世界の不安定な世情はそれも関係しているのか?」
「あ。失礼。今神託が下りました。天界からの報告です。
  天界のほうも今回の一件は重要視しているようです。というか、
  どうも天界のほうからも【世界の歪み】を無理やりにつくった勢力がある…とのことなんですが……」
ざわっ。
光の教壇の神官長の言葉にその場にいるほとんどのものがおもわずざわつく。
さもありなん。
天界より無理やりに地上に出向いた輩がいる可能性があるかもしれない、というのだから。
彼らは人とはことなる概念をもっている。
自分達が絶対、と思い込んでいる輩も多々といて、ゆえに時として地上を混乱に貶める。
がくっ。
その言葉に思わず脱力してしまうディアは何も間違ってはいないであろう。
……また同じようなことしてるんだ……
毎回、毎回、進歩がない、というか何というべきか……
「…つまり、下手をすればこの地上が天界と魔界の戦乱の場になる可能性がある…と……」
『ううむむ……』
その言葉の意味を悟り、つぶやく国王の言葉にその場にいるディア以外の全員がおもわず腕をくみ考え込む。
まず普通に考えてそんな戦いに巻き込まれれば普通の人はまず生きてはいられない。
絶対に。
「…精霊界に協力を仰ぐことは?」
「それがいま、精霊界はなぜかあわただしくなっているらしいです。理由はわかりませんが」
それぞれの界と交渉をしている外界外交長官がその意見に口をだしてくる。
「まずは、【門】にその管理を徹底してもらう、というのが一番先、かと」
一度開いた道はどうやらすでに互いに閉じられている模様。
これ以上の道を創られないために、世界を隔てる【門】へ話しを通しておくことは必要であろう。
門に意思があるかどうかはいまだに意見がわかれてはいるが、それなりの意思はある、というのが一般的な意見。
「…では、伝道師達にその旨を連絡して……」
「ですな」
伝道師達ならば【門】の場所にも簡単にたどり着ける。
「まあ、外界からの侵入者がありえるかもしれない、というのはまた議論するとして。
  昨日の堕者の存在のことに議題をうつろう。
  何でも課外授業どきに堕ちたキマイラが出現した、ということらしいが?」
外界とのごたごたはあまり人に聞かせるものではない。
それにまだ不確定な情報でもある。
完全に判明するまで人々を混乱させないために情報は漏らさないほうがいい。
ゆえにとりあえずその話題をひとまずおいておき、昨日の話題にと議題を切り替える。
「はい。私たちにはどうにもならなかったのですが。
  こちらにいる生徒が精霊達に頼みどうにかことなきを得たようです」
ヘスティアの言葉をうけて、その場にいる全員の視線がディアにと向かう。
「ディアさん、申し訳ないけど説明してもらえる?…緊張してるかもしれないけど」
ディアが先ほどから黙りこくっているのをうけ緊張している、と勘違いし戸惑い気味にディアに話しかけてくるヘスティア。
「説明っていっても…あまり説明するようなこともないんですけど。とりあえず。
   えっと、はじめまして。今、ヘスティア=アルクメーネ教師より説明がありました、ディアと申します。
  所属は総合科C組Aクラスです。先日、たまたま課外授業に出向いていたところ、
  界の歪みと堕ちたキマイラに遭遇しましたが、そのあたりの精霊達に頼み、
  あと異変を感じ取ってやってきていた竜の子供の協力もありその歪みの訂正はなされたようです」
とりあえず目立つことは極力避けたいがとりあえず席をたち、かるく服のスソをつかみかるく挨拶。
そのあと、簡単にその場にいる全員にむかい説明する。
「竜の…こ?」
「はい。たまたま風の精霊と遊んでいて異変を感じ取ってきたらしいです。
  まあ竜族は自然界の分身、といっても過言のない存在ですから」
戸惑いの声をはっする国の重鎮らしき人物の言葉をうけてにこやかに答えるディア。
普通の生徒ならばかたまって返答に困るであろうに、目の前の少女にはそれがない。
「……はて?」
何かどこかでみたような?
そんなことをふと神官長がおもうがそれがどこだったのか思い出せない。
まあ、彼が以前あったときとは髪と瞳の色が異なるのですぐに気づく、ということはないであろうが。
「なるほど。貴殿は自然とその…心を通わせられるのですかな?」
「私の周囲はみんなそうですけど……。なぜか学校に通うようになってそういう人達はあまりいない、
  というのに少し驚いているんですけどね」
嘘ではない、嘘では。
最後の言葉は多少心底心外だ、というようにとりあえず付け加える。
そんなディアの言葉に。
「ふむ。貴殿はエルフ族とかかわりが?」
「まあ、かかわりがある、といえばありますけど。でもエルフ族ではありませんよ?」
「そうか……」
ギルドより出されている少女のギルド登録申請書には詳しいことが書かれていない。
しかし受付した人物によると親はいないみたいなことをいっていたらしい。
ならば親を亡くした子供がエルフ達に育てられていても不思議ではない。
そう判断し、
「では、貴方も詳しいことはわからない、と?」
「まあ、界の歪みなんてものは滅多とおこりませんし。私のようなものがわかるとおもわれます?」
そもそもいまだに成人していない子供に意見をきこう、という他力本願がどうかしている、とおもう。
たしかにディアの言葉には説得力がある。
よもやいまだに十三になったばかりくらいであろう少女が歪みを治せる、とも誰もおもわない。
「あいわかった。とりあえず参考までに当事者に来てもらったわけだが。
  しかし、精霊達の声をきけるとは、そなた、国に使える気は……」
「ありません」
さくっと国王の勧誘をさらっと却下。
「…理由をきいても?」
「国に使える意味がありませんし。私は私の好きな用にすごすつもりです」
というか自分が一国に仕えた・・・としったら精霊王達が起こす反応がかなり怖い。
やれ、我らが主を国に縛り付けて…などと、ある存在などはまちがいなくいいだし騒ぐ。
それはもう確信がもてる。
「そんな勧誘をするより、みなさんが自然の声に耳をかたむけるようにしたほうがはるかに早いとおもいますけど」
この場でディアのもつ気配に気づいているのがいったいぜんたい何人いるであろうか。
いくら多少離れているとはいえその気配が完全に自然界のそれである、とよくよく観察すればわかるであろうに。
しかしこの場でそのことに気付いたものは一人たりとていない。
「そう簡単に自然の声がきこえれば苦労はせんよ……」
ぽそり、と重鎮の一人が世間知らずの子供が何をいう。
というような意味合いをこめてつぶやいていたりするが。
その言葉をききとがめ、
「では、とりあえず大森林に一人で何ももたずに数年間そこで自給自足をしてみたらいかがですか?
  嫌でもわかりますよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それは、死ね、といってるのと同意語では・・・・」
にこやかにいうディアの言葉に別の人物がおもわずつっこむ。
「あら?あそこはたしか、自然に優しい人達はよろこんで迎え入れてくれますよ?
  もっとも少しでも邪な考えとかもってたら問答無用で排除しようとしますけど」
にこにこにこ。
「…ぐっ……」
たしかにそう噂されている。
しかしあの大森林に出向いて無事にもどってきた存在など…彼らは一部のものしかしらない。
そのときですら精霊達の案内をえて、の状態だったはず。
ゆえににこやかにそういう少女の言葉にただうなるしかない。
大森林。
それは竜の里を取り囲む森林であり、迷いこんだらまちがいなく死を意味している、ともいわれている巨大な森。
近くに大きな気が集まっていることもあり、それに反動した気が集まっているのも事実。
ゆえにかなりの魔獣が滞在している森でもある。
「…まあ、まだそなたは若い。気がむいたら是非とも国のことも考えておいてくれたまえ」
他の国にその才能をもっていかれるのはかなりきつい。
そもそも自然の声をきける存在は、魔術師十数個隊より大きな働きをもたらす。
何しろ自然に直接語りかけ、時には精霊達ですら仲間にできる存在。
その中でも【言霊使い】、と呼ばれている存在はかなり貴重な存在、といわれている。
「説明をありがとう。もうよろしいぞ」
「では、失礼します。あ、もう戻ってもいいですか?なんだか疲れましたし」
「仕方ない。ヘスティア=アルクメーネ。彼女を寮までおくっていってさしあげなさい」
「は。わかりました。ギルド長」
確かにこんな場にいまだに歳若い少女がいることだけで精神的に疲れるであろう。
ディアの言葉をうけてそう判断し、国王がちらり、とギルド長にと目配せをする。
その目配せをうけ、上司命令、としてディアの担任であるヘステアにと申しつけるギルド長。
「では、ディアさん、いきましょうか」
「はい。先生。それでは、みなさま、ごきげんよう」
とりあえず席をたち、その場にいる全員に再びかるく頭をさげてかるく判れの挨拶をかわし、
そのまますたすたとヘステアにつづいて会議会場を後にする。
ディアとともに城の回廊をあるきつつ、
「しかし。ディアさん、慣れてましたね。ああいう場の雰囲気に」
「あ~、まあ、ああいうのはよくありましたから……」
「よく?それは…?」
「まあ、いろいろ、です」
やれ会議だの何だの、執務だの、伊達に日々過ごしていたわけではない。
というかたかが人がもつ覇気などディアにとっては赤子同然。
ゆえにのまれる要素はまったくない。
会議が常に盛りあがるつれて中には力を使おうとする存在達も多々といた。
ゆえにもうそれは慣れっこといって過言でない。
…まあそういった存在にはしっかりとお灸をきちんと据えておいたが。
「しかし、何がおこってるのでしょうかね……」
「ま、何かが起こっているのは事実ですね。私は静かに過ごせればそれにこしたことはないですけど。
  ですけど、降りかかる火の粉ははらいますよ?先生?」
「……その火の粉、というのがかなり気になるのは私の気のせいかしら?」
にっこりと無邪気なまでの笑みを浮かべていいきるディアの言葉に、
なぜか脳裏に嫌な予感がよぎり思わず問い返しているヘスティア。
目の前の少女がどこまでの力をもっているのかわからない。
しかしおそらく言霊使いの能力をもっているのは疑いようがない。
そんな少女が降りかかる火の粉は払う…という表現をする、ということは。
下手をすれば精霊達をも巻き込んで行動しかねない。
もっとも、精霊達がそれに力を貸すかどうか、という注釈がつくが。
しかし何となくだが精霊達は彼女には喜んで力を貸しそうな気がひしひしとする。
それは直感。
それはおそらくディアがもちえる気配から漠然とそのことを無意識的に認めているからに他ならないのだが。
しかし、ヘスティアは知るよしもない。
その気になれば…というか彼女が動けば精霊王達がこぞって
自分達も動く!といってそれぞれに行動をおこしかねない、ということを……


                            ――Go To Next

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あとがきもどき:
薫:そろそろ天界、魔界の組織さんの概要がちらほらと。
  まえぶりででてきたのは、魔界の組織さん達。
  ディアがぽそっとつぶやいていたのが組織の愛称(まて
  次回で組織メンバーの一人との接触になって、それから精霊王、かな?
  何はともあれ、ではまた次回にて♪
  ちなみに、神官長は神官長見習いの時期に天界の狭間に出向いたことがあり、
  そのときに光の主神ホルスと実際にあったことがあったりします。
  そのときにお仕事が滞りがちがったがゆえに
  ホルスのところに催促いったディア(黒髪黒眼)とあったことがあったりするのですv
  そのときまだ彼は幼い子供だったのでどこかでみたような?みたいな感覚でしかありません。
  まあ雰囲気はそのままだけど、容姿が異なりますからね。髪と目、だけですけど。
  何はともあれまた次回にて~♪

2011年3月14日(月)某日

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