まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
ようやく精霊王さん達がでてくる回に突入開始v
といっても長さ的に精霊王は今回になるか次回になるか…打ち込みしてみないと不明です。
ちなみにおそらくこの火の精霊王さん、登場したのち、主人公慕ってちょくちょくやってきます(笑
何はともあれ、いっきます♪
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「えええええ~!?」
なぜか実家からいきなり連絡がはいってきたとおもったら。
どうでもいいが幻影珠に映像ごとはめ込んでおくってきてほしくはない。
そもそも、この珠が一ついくらするとおもっているんだ、うちの親。
そんなことをおもいもするが、送られてきた内容が内容である。
『あなたも水の精霊と契約し加護をいただいたそうじゃない?
ならやっぱり卒業するのをまたなくても契約の儀はすませられるとおもうのよ』
にこやかに珠から浮かび上がるようにいってきているのは見間違えようのないほどに知っている人物。
「…ほんと、どこから情報をすぐさま得るのですか…お母様……」
この母親はいったいどういうツテをもっているのだろう。
ゆえに通じない、とわかっていてもおもわず突っ込みを入れるケレス。
常々そんなことをふとおもってしまうケレスはおそらく間違ってはいないであろう。
『次のお休みの日にむかえにいくからね~』
「って、えええええ!?」
わ、私の意見はぁぁ!?
文句をいうよりさきにどうやら時間が切れたらしく、ぷつっと映像が途切れ、
その場にころん、と転がる内部に光がきらめく不思議な水晶玉のようなものが取り残される。
「い…いつも、いつも子供の意見きかずに何でも物事をきめないでぇぇ~~!!」
これが子供の意見、でなく他者の意見、にも当てはまるのだからタチがわるい。
そういうケレスの叫びは…ただただ、風の中にととけきえてゆく……
光と闇の楔 ~フォボス火山での儀式~
「…は?」
昨日の一件のときもこちらに姿を【模して】いたから何か実家から連絡がきた、とは知ってはいる。
いるが、おもわず目が点になってしまう。
結局のところ、アテナは天界にともどり、今後の対策を話し合うことにしたらしく、
そしてまたリュカはリュカで魔界にもどり、天界からの道のことに関して組織に報告するとのこと。
まあそうするように指示をだしたのはほかならぬディアなのだが。
「だから。この間の精霊の加護がなぜかお母様に知れててて。
それでもって卒業前に儀式うけろっていう連絡だったのよ」
いや、まあそれはきいた。
いきたが、だがそれよりも。
「・・・・いや。私がききたいのは、それをいいにわざわざこのクラスにきたの?」
わざわざA組の彼女がC組にきていることが信じられない。
というかたしか今A組は授業中のはずなのではないだろうか?
C組は本日の授業はなぜか自習、となっているので問題がない、といえば問題ないが……
「ヘスティア先生にいったらいいっていったし」
今、A組はC組の担任であるヘスティアの担当する授業中。
一応ケレスは教師に許可をとりなぜか授業中にこの場にやってきていたりする。
「……ヘスティア先生、何かんがえてるのかしら?」
きっぱりとそういわれおもわず呆れてしまうディア。
どこの教師が授業中に抜け出してもいい、と許可するというのであろう。
事実、許可をしているからこそここにケレスがいるのであろうが……
とりあえずここにケレスがやってきた理由はわかった。
わかったが。
「で、何で私にわざわざその話しを授業を抜け出してまでいいにきたの?」
問題はそこ。
そもそも話しならば寮にもどってからでもいいような気がする。
もしくは授業がおわってからか。
何となくだがとある可能性がしてしまいなかったことにしたい。
切実に。
だけども聞かなければおそらく彼女はいきなり話しだしてしまうであろう。
これはもう確信。
「何いってるのよ!ディアにもフォボス火山にいってもらうからよっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
何となく予測はついていたというか何というか。
目の前の彼女はほんとうに意表をついた行動をしてくれる。
ゆえにこそおもわずきょとんとして再度問いかける。
しかもおもいっきりさも当然、とばかりに力説してくれている。
周囲の生徒はといえば、
「ええ!?あの死の火山に!?」
「ディアさん、あなたのことはわすれないわ」
「あ。火山帯でとれる金剛石をよろしく~」
何やらとてつもなく無責任、ともいえるような会話がなげかけられてきているが。
さすがに自習時間中にいきなり、
『ディア!?いるっ!?』
といってがらっと扉を開き教室にはいってきていきなりディアの真横にいったケレスはかなり目立つ。
ゆえにクラス中の注目の的になっていたのも一つの理由、であろうが……
「何で私が一緒にいかないといけないわけ?」
そもそもどうして自分が一緒に行かなければならないのか。
わざわざ出向いていけば自分に一番近い彼らはおそらく間違いなく気づいてしまう。
そうなったら今後のことにも影響がでかねない。
…とくに、かの性格を考えればなおさらに。
「何いってるのよ!?私とディアは一心同体でしょ!?」
「いつ一心同体なんて話しになったわけ!?」
「今っ!!それにバーティー組むってそういうことよっ!」
「いや、違うからっ」
出会ってまだそれほどたってはいないがケレスの性格は大体把握している。
…こ、この子…ヴリトラと出会ったら意気投合しそうよね……
ふとそんなことを思い思わず最近であっていないかの存在に思いをはぜる。
思いこんだら一直線。
しかも周囲を巻き込んで。
…ヴリトラの系統の魂でなかったとおもうけど……
ふとそんなことすら思わずおもってしまうディアはおそらく間違ってはいないだろう。
それほどまでにかの存在とケレスの性格はよく似ている。
だからこそどこかほっとけない、というのもディアからしてみればあるのだが。
竜族の神である神竜ヴリトラ。
昔から甘えん坊でありやんちゃ。
産まれた当時はよく大地を闊歩しては焦土とかしていた。
ふとその当時のことを思い出す。
「というわけで、今日、授業がおわったらお母様がむかえにくるからっ!」
「って今日なわけ!?」
いや、今、たしか休みの日に迎えにくるとかいってなかった?この子?
そうディアがおもっていると、
「お母様の休みの日に迎えにくる、イコール、それは休みの日に火山につれてくってことなのよっ!
つまり、差し引き計算しても今日には必ずくるのよっ!てことでディアも先生にお休みの許可とってるからっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「って、もう決定事項!?というか勝手に人の休暇願だしたわけ!?」
ほんとうに意表をついた行動をしてくれる。
だからあきない、というか面白い。
人の心のうちまではディアとてわからない。
のぞこうとおもえばできるであろうがそうはしていない。
「だから、先生がディアのところにいってもいいって許可くれたんだもの」
「…ケレス…人の意見きかずに勝手に……」
「だって、他に頼れる人いないしっ!あの死の火山にいくのよっ!?
お母様のことだから絶対に私が誰か連れをつれていかなかったら一人でいってらっしゃい!
でおわりよ!?何の準備もさせないままによっ!まだ幼い私をあの場所に放り込んだお母様よ!?」
あのときは死ぬかとおもった。
本当に。
そのときのことを思い出しながらも瞳をうるうるさせて力説しているケレス。
哀れに思った火竜の一人があの場から連れ出してくれなかったら今のケレスは間違いなく存在していない。
「ディアさん、いってあげなよ~」
「そうそう。火山帯にできるっていう水晶よろしくv」
「私は金剛石ね~」
そんなケレスの台詞に同情したのか周囲に生徒達があつまりディアにとそんなことをいってくる。
「って、水晶とか金剛石って…採取してこいってこと?」
「「うん」」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
たくましい、というか何というか。
まあたくましくなければこの学園に通えない、というのもあるのだろうが。
何か断れない雰囲気、とはおそらくこういうことをいうのであろう。
「…は~。わかったわよ……。だけど奥まではついていかないからね?」
奥までついていってサラに抱きつかれてはたまらない。
そんなことにでもなればごまかしようがなくなってしまう。
そんなことを思いつつも妥協し、ため息をつきつつも肯定の意を吐き出すディア。
「ありがと!ディア!さすが親友!私の生涯のパートナー!」
「で、結婚式はいつ?」
「新婚旅行は?」
「って、何のりつっこみしてるのよっ!あなたたちもっ!」
何やらノリのいいクラスメートがいるらしい。
ケレスのパートナー、という台詞に突っ込みをいれなぜか結婚式、とまでいいきっていたりする。
まあこの世界、たしかに同性の婚姻は認められている。
いるが…どこをどう解釈したらそういう系統に捉えられるのであろうか。
何だかここまでわきわいあいとクラスメート達と会話したのもこれが初めてのような気もしなくもないが。
しばしそんなたわいのない、それでいて騒がしい会話がC組Aクラスの中で繰り広げられてゆく……
「……ねえ。ケレス…ひとつ、きいてもいい?」
「…きかないで。いいたいことはわかるから……」
ざわざわざわ。
この場にはほぼ全員、といっていいほどに学校にかよう生徒達が集まってきていたりする。
中には教室の窓からこちらをみている生徒達の姿も垣間見える。
目立っている。
はっきりいって。
今、二人がいるのは学校の正面にあるちょっとした校庭。
広さはかなりあり、何かあったときなどはこの場が臨時の避難所などに設定されている。
ちなみに国を挙げての毎年のお祭りもこの校庭を起点として開かれる。
この国のお祭りは様々な出し物などを各ギルトに所属している存在達が技術を競い、
そしてその表現力などをも競う場ともなっている。
そして祭り最終日に行われる投票で最高点をとった存在には賞金と賞品が手渡される。
つまりかるく小さな村ならば一つや二つくらいはいるくらいの広さを誇る校庭、なのだが。
その校庭の一角になぜか紅くそびえる山がでんっと座りこんでいるのはこれいかに。
しかも、ぐるぐるとノドをならし、その紅き鱗とゆらゆらと揺れるシッポ。
「…ねえ。ケレス?あなた、竜にあったのあのとき初めてとかいってなかったかしら?」
「緑竜にあったのはあれがはじめてよっ!」
しかもあの竜は野生、すなわち人と契約し人の世界に溶け込んでいる竜ではなかった。
ディアの素朴な疑問にすかさず答えているケレス。
まあ確かに。
彼ら…すなわち先日であった緑竜のクレマティスとアルニカ夫婦と比べれば小さくはある。
あるがこんなおもいっきり人里というか町中に竜がやってきている、という事が重要。
そもそもここは王都の一角。
しかも近くにはお城もある。
そんな中、いきなり竜族の中でも気性が激しい、といわれている火竜がやってきたらどう思われるか。
当然町中はパニックなりかねない。
パニックになっていないのはおそらく火竜自体に認識を周囲に溶け込ませる術がかかっているからだろうが。
それでも町中に竜が舞いおりる、などあまり聞いたことがない。
しかも何の連絡も前触れもなく…である。
「…ねえ。ケレスのお母さんっていったい……」
「いわないで。そ~いう人、なのよ……」
まさか学校に竜をよこす、とはやりかねないかもしれない、とおもっていてもやってほしくなかった。
それがケレスの本音。
ディアがその気配に気づき、精霊達が火竜が近づいてきている、と言葉を変えて伝えなければ、
おそらくケレスは信じたくなかったし信じられなかったであろう。
しかし目の前の真実はどうみても覆しようがない。
「…まちがいなく、うちで契約してる火竜のひとりだし……」
は~……
竜の個別認識くらいはいくらケレスとてわかる。
というか幼いころから家につかえる竜の認識くらいはできなければならない。
といってできなければ食事抜き、ということもざらであった。
ゆえにもう必死で覚え、どうにかこうにか認識はできるようになっている。
この世界での竜の数え方は基本、一頭、二頭、という形となっている。
知能がほぼない龍のほうはといえば匹、という数え方になっていたりするのだが。
もっとも、わざわざ区別せずに大概の存在は一体、二体、とまとめて呼んでいたりするのだが。
ケレスが、ひとり、と称したのにはわけがある。
歳を得た力ある竜はその力において人型を成すことができる。
ゆえに、そのときのことをもかんがえて、『○人』という呼び方をしているに過ぎない。
「じゃあ、やっぱり、ケレスのいってたお迎えって…このこのこと?」
というか竜をわざわざ迎えによこすその感覚がいまいちよくわからない。
まあ確かに昔、竜族と人族が仲良く共存していたときには見られていた光景ではあるが。
ここ最近はそのような光景はあまりみない。
「みたい。とにかくここにいつまでもこうしていても逆に目立つばかりだし。いきましょ」
「…私、まだいくっていってないんだけどな~……
まあ、仕方ないけど。だけど私は直接には乗らない、からね?」
直接触れればまちがいなく判る、であろう。
「?直接?どういう意味?」
「空気のクッションの上にでもすわってくわ」
「…そんなことまでできるわけ?」
本当はそのままふわり、と浮かんで飛んでいってもいいのだが、いかんせんそれはかなり目立つ。
ならば普通に乗っているように見せかけたほうがまだ目立たない。
とりあえずこのままでは騒ぎが大きくなるばかり。
それゆえに半ば仕方なしとばかりに竜の背に乗り込むケレスとディア。
「くぅおおおっっっっっっ!」
ケレスが背に乗った感触を確かめた後、大きく一咆えしそのまま、
ばさっ。
その力強い左右の翼をはばたかす。
しばし周囲に火竜の翼によって発生した風による砂埃が周囲に吹き荒れる。
やがて二人を乗せた竜が上空に羽ばたきその姿を点とさせるころ、
「…お~!すげー!俺、初めて竜ってみたぜ!」
「わたしも、わたしも~!!」
何やら違う意味で騒ぎだす学生達の姿が学校内において見受けられてゆくのだが。
当然、ケレスはそのような騒ぎになっているなど知るよしもないのであった……
ごおっ。
周囲に何ともいえない熱が吹き荒れる。
フォボス火山。
別命、死の火山、といわれているだけのことはあり周囲は熱気につつまれている。
どこからともなく地下より水蒸気があふれ出しており、ときおり硫黄のにおいも鼻につく。
周囲にはときおり吹き溜まりのようになっている溶岩の窪みのようなものも存在し、
そこらかしこに様々な生物の骨が散らばっていたりする。
「あら。おそかったのね。あら?そちらの子は?」
そんな中、まったく汗もかかずにのんびりとなぜかその場に椅子などを用い、
優雅に机の上においているティーカップを手にしている女性が一人。
舞いおりてきた竜の背にのった二人の姿をてとり、そんなことをいってくる。
「…お母様、いきなり火竜をよこすなんて、もし騒ぎになったらどうするのですか?」
「あら。大丈夫よ。騒ぎになってもその子はそこいらの国の兵士に負けるような子ではないわよ?」
そういう問題ではない。
ないが本気でそれをいっている、とわかってるからこそ頭をかかえてしまうケレス。
「…お母様……」
下手をすれば宣戦布告、ともとられかねない行為である。
なのにそれを面白そうだから、という理由で毎回、毎回やられてはたまらない。
「それで?そちらの子は?」
「あ、はじめまして。私はディアといいます。総合科に所属しています」
あえて何組、とは説明せずに、ケレスの母親らしき人物にぺこり、と頭をさげるディア。
ケレスの母親、と呼ばれた人物はケレスと同じく紅き髪をしており、
そしてその瞳の色もまた真紅。
対のルビーのような輝きをもった瞳の持ち主。
全体的な感じる雰囲気は温和で人あたりがいいようにみえなくもないが、
その雰囲気と性格は似ても似てつかない、とはケレスだけでなく彼女のことを知っている誰もが口をそろえていう言葉。
「まあ。ケレス。お友達ができたのね?ここにまでつれてくるなんて。
ケレスったら一人で死ぬのが嫌だからってお友達まで巻き込むのね~」
「…お母様、死ぬのが確定ですか?確定なんですか!?」
「あら、冗談よ」
『・・・・・・・・・・・・・・・・』
さらっといわれおもわず無言になりつつも視線のみを交わすケレスとディア。
「まあ、せっかくなんだから。それじゃ、いってらっしゃいな。ケレス。
かえってきたら私の特性の紅茶を飲ませてさしあげますわ」
「全力で遠慮させていただきます。お母様。お母様の特性、というのは様々な毒草などもブレンドされた紅茶ですので」
「あら?毒耐性をつけるのにはいいのに」
彼女が用意していたのは、トリカブトの根とスズランの根をブレンドしてある紅茶。
まず常人が口にすればまちがいなく死にいたる。
すぐさま解毒をしてもその量によってはかなりあやしい。
「…いつも、こうなの?ケレス?」
「うん……。なのでディアもお母様のだすものはまずたべないでね。もしくは解毒剤用意しといて……」
「あ~……」
何となくではあるがケレスがどうして一緒にきてほしかったのか納得してしまう。
たしかに一人だとまちがいなく相手のペースにのまれてそのまま何か口にしてしまっていたであろう。
おそらく家でもそのように生活していたのであろうことは用意に予測はつく。
しかしここに第三者がいることで少しは話題をそらすことができる。
「とりあえず、お母様。これより儀式をうけるために潜るのでよろしいのでしょう?」
「まあ、まあ。やる気になってくれてうれしいわ。お母さん、じゃあ、お祝いの聖水を…」
「それもいりませんっ!どうせ魔よけでなく、魔ヨせの聖水なんでしょう!?」
「あら~。せっかくのお母さんの親切な行為を……戦闘を経験させて強くさせたい母心なのに…」
「そんな心はいりませんっ!…ディア、このまま魔ヨセの香水撒かれないうちにはやくいきましょ」
このままここにいてはまちがいなく母はあの香水をつかう。
魔ヨセの香水。
それは魔獣たちが好む匂いを発しいやでも周囲にひきつける。
しかも興奮状態となっている彼らは問答無用で挑んでくる。
それでなくても溶岩地帯にはいるのにそんな厄介なものは御免こうむりたい。
何やらほのぼのとした母子のやり取りをかわし、どこか母子の会話がずれているような気もしなくもないが、
とりあえずそのままディアとともにケレスはこれ以上母が何かしでかさないうちに洞窟の中へいかないと。
そう心に決意しまずこの場からの脱出をこころみる。
そんな素直に洞窟の中にはいっていった二人をみつつ、
「あらあら。ケレスったらてれちゃって。別にお友達がいてもお母さん特性紅茶のむくらい大丈夫なのにね~」
どこか本気でずれたことをいっているケレスの母の姿がその場においてしばし見受けられてゆくのであった……
伊達に死の火山、といわれているわけではない。
「ああ。そろそろ噴火が近いせいか」
周囲には硫黄のにおいが充満し、ときどき微弱ながらに大地が震えている。
この辺りには様々な種族の集落も存在していない。
この火山の周囲にはぐるりと取り囲む窪みのような深い断崖絶壁があり、
万が一火山が噴火しても流れ出した溶岩は大概その絶壁の中にと吸い込まれてゆく。
もっともその絶壁の果てはとある場所に繋がっているのだが。
容量を超えてその窪みより溶岩が流れ出したとしてもその前にある巨大な湖にて冷却される。
ここが死の火山、といわれているのは人が通常でたどり着くにはかぎなく不可能に近い立地条件であることも一つの要因。
「ディア、あなたは平気なのですか?」
母親から逃げるため、とはいえ無理やりといっていいほどにこの洞窟の中に入り込んだ。
この洞窟の先は伝承では地下深くまで続いているらしい。
そしてその一番最深部に火の精霊王が鎮座している、と伝えられている。
「何が?」
「ここの空気、ですっ!水の結界を施してはいますけど、何というかこう息苦しいというか……」
水の結界だけではたしかに空気の浄化まではできないであろう。
まあ水の成分により多少毒性が緩和されることがあれども完全に取り除けるというわけではない。
「水と風の結界を同時に纏わないから」
「ど…同時?」
「そ。どうじ。まあとりあえずは体の周りに水を張り、その外に風を纏う感覚をもってみてやってみて?」
風にて毒性のある大気を霧散させ、さらに水分により空気をさらに清める。
そうすることにより人体に及ぼす影響が極端に減らせられる。
術の中に解毒などといった体に害を及ぼす成分を取り除く術はあれどもそれも完全ではない。
それらはあくまでも外部から取り込んだもの、に通用するものでじわじわと取り込むものにはあまり効果はない。
正確にいうならばちょくちょくその術をほどこさねばまったく意味がない、ということでもある。
「まあ、まだケレスには難しいかな?…仕方ないわね。風よ」
ふわっ。
そうディアがつぶやくとともに前触れもなくケレスの体全体を柔らかな風の流れが包み込む。
「え?で…ディア?今の……」
「ただ、ケレスの周囲に風の発生を促しただけよ」
「いや…だけって……」
風の発生を促す、などと風の精霊でもないのに簡単にできることではない。
そもそも、魔道具の一つも使ってなどいない。
それとも服の下とかにそういった道具を身につけているのかしら?
ディアの素朴な疑問はいろいろつきない。
「それより。ケレス。お客さんがでてきたみたいよ?」
「……え?…なに…あれ……」
目の前の道をふさぐかのようにうねうねとうごいている物体。
どうみても溶岩の塊、にしかみえないが、それがどうしてこうして意思をもったように動いているようにみえるのか。
「何、って。溶岩タイプのスライム、じゃないの」
「…はい?」
たしかに話しには聞いたことがある。
あるが…このちょっとした人間の大きさ程度まである個体は一体全体どういったらいいのであろうか。
ゆえにケレスの間の抜けた声も仕方がないといえば仕方がない。
通常ならば普通はさほど大きくない、というのが定説、なのだから。
「溶岩タイプの魔獣には氷の術が有効よ」
「って、ディア~!何そんなのんびりとそんなこといってるのよ~!って一体じゃないぃぃっ~~!!」
よくよくみればうねうねとそんな個体が…数体。
まだ洞窟にはいってさほど進んでいない。
にもかかわらずこの出会いはケレスにとっては予想外。
確かにこの洞窟の中には様々な魔獣がいる、とはきいている。
いるが…
「こんな大きな魔獣なんてきいたことがないぃぃ~!」
「?え?精霊王達がいる場所の魔獣たちって基本、通常の魔獣より数倍大きいのは常識よ?」
ケレスの叫びと、きょとん、としたディアの台詞が何より対照的で印象深い。
「…はい?ってそんなの初耳よぉぉ!?」
「え~?精霊達の力が強い、すなわち自然界の力もまた濃いいから自然と大きくなるんだけど……」
少し考えればわかりそうなものなのだが。
「ま、とりあえず、いきましょっか」
何やらさけんでいるケレスをみて苦笑し、ふいっと手を横にとむけるディア。
それと同時、ディアの手の平が一瞬青く光ると同時、次の瞬間。
先ほどまで何ももっていなかったはずのディアの手になぜか一振りのムチらしきものが握られていたりする。
「…ディア。少しきくけど、それ、何?」
「何、って、見てのとおり。氷の鞭」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
どうやってだした、というかどこにそんなものをもっていたのか。
つみっこみたいのは山々。
が、しかし。
「ほらほら。攻撃してくるわよ?」
「え・・?んきゃぁぁっ!?」
二人のやり取りをみてとり、獲物がきた、と判断した魔獣たちは一斉に二人のほうへと意識をむける。
そのまま溶岩の塊を吐き出すもの、突進しようとしてくるもの。
個体によって攻撃の様子は様々。
「さってと。すこしばかり舞いでも踊りますかね」
どちらにしてもこの魔獣たちはここに淀んだ気により生れ出た存在。
この地で命を落とした存在達が溶岩に入り込み、そして仲間を増やそうと、または同じ目にあわそうと。
そういった負の気しかもっていない輩達。
ゆえに容赦する要素はまったくない。
ぱしっ。
手にした氷のムチをかるくのばし、にこやかにほほ笑みつつも言い放つディア。
ディアのもつ氷のムチ。
それは絶対零度の氷であり、触れたものは瞬時に瞬く間にどんな存在ですら凍りつかせてしまう。
というあるいみ究極の武器でもある。
しかし、当然、その事実をこの場にいるケレスは知るよしもない……
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あとがきもどき:
薫:火の精霊王、サラマンダーの登場までいけなかった…ま、次回、かな?
サラちゃん(まて)気配感じ取って儀式の後にやってきます(笑
しかし最近、仕事おわって打ち込みしてたらかなりねむくなっている…
毎日更新…眠気にまけていつか途切れるかも(汗
2011年3月18日(金)某日
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