まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

みてくださっている方々、ありがとうございますv
今回はちょっと独り言?をば。
某人より、「平仮名が多い」という意見をいただきました。
けど、客観的視点を目指している以上、自然とそうなるんですけどねぇ?
そもそも、漢字ばかりだと固くなる、というのがあるんですけど。
悪くとらえると、そのひと、固い小説でも読みやすいのか?と思えるところもありますが…
(あとは台詞ばかりで背景情景とかまったくないような小説も人によりけり。
  好き、という人もいれば、情景がわからないから読みにくい、という人もいるわけで)
基本、こういう小説系はオブラート。
つまり柔らかさが読みやすさ、と思っている私としては、(特にオリジナル小説に関しては)
漢字を使う場所でもあえて「ひらがな」を使うことで柔らかさを出す場合もあるわけで。
何か捉えようは人それぞれだなぁ、としみじみと納得した意見でした。
でも感想欄が炎上するのも嫌なのでひとまずさくっと削除しました。
感想とは書き手の意欲をへし折るものであってはいけない。
これはヨミテの常識、とおもうのですが、みなさんはいかがでしょう?
やはり、楽しく読むのがマナー、と思うのですよ。ええ。
んで気にいられなけば二度と読まなければよいわけで。
そもそもそれぞれにあった文章の形式とかパターンとか人それぞれですしね。
市販されるようになるレベルの作家さんになるためには、
そういった人々すべてに対応した文章力が求められますが…(笑
私はまったくそこまでのレベルにいっていない、と自覚あり(涙
書き込みした当人も思うところがあって書き込みしたのはわかりますが、
返事に困るような書き込みもまた?状態なわけですし。
特にネット上は誰でもみれることから、書き込みなどに関してもかなり注意が必要、だとおもいます。
悪意ありまくり、という人もいない、とも限りませんしね…(自己防衛は大切です
まあ、とりあえず持論?をのべましたが、ともあれいくのです

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「ふぅ。いつも思いますが、この時期は平和ですね~」
「いや、まったく」
ほとんどの生徒が大会に参加している。
しかも一般の腕に覚えのある存在達も。
「いつもギルド全体がここまで平和だといいんですけどね~」
いつも何かに日々追われている毎日。
特にここしばらくはその内容が異様に濃かったような気がするのはおそらく気のせいではない。
「そういえば、見回りにいったものが何かかわった植物をみかけた、といってましたよ?」
「…また、実験室のものを勝手に誰かが外にうえたのでしょうか?」
実験の成果で教室内で育てるのはまだよい。
しかし実際に外に植えたらどのように植物になるのか試したい。
そんな思考をもつ少し困った教師がいるのも事実。
そのつど、吸血植物や飛行植物、挙句は肉食植物、などなど。
そんな物騒な植物を学校の敷地内にはなってほしくない。
切実に。
「……今のうちに、燃やしときますか?」
「いや、前回の反省を取り入れてるでしょうし。だとすれば火の耐性をつけているでしょう?」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
前回はたしかに燃やしつくすことができた。
しかし、今回は?
ゆえにその可能性に思い当たり、
「「・・・・は~・・・・」」
しばらく黙った後に二人同時に盛大にため息を吐き出す。
ほとんど人のいなくなったギルド協会学校の職員室の一角において、
教師達の会話がしばし交わされてゆく……

光と闇の楔 ~お祭り騒ぎ最中の出来事~

「ヴルド国王は何を考えているんだ……」
話し合いの場においても自分達には関係ない。
しかもすべてにおいて自分達が信心している神こそが正しい。
そう言い放ち、この場を後にしたヴルド王国の国王。
この場から退出するのは個人の自由とはいわれたがそれをうけてすぐに退出するとは。
この空間から出ようとすると何もない真っ暗な空間に扉が出現し、
その扉をくぐることにより、元いた場所にもどれるようになっている。
扉をくぐると同時、止められていた時間が動き出すように設定されているらしく、
当人以外からしてみれば何ゴトもなったかのように時間は動き出す。
「この場で宣戦布告をしてでてゆくとは……」
テミス国王だけでなく、他の国の国王達もまたそんな彼の行動にただただあきれるしかない。
つまり自分のことしか考えていない、というのがよくわかる行動。
「まあ人間達のことは人間達に任せるとして。今はひとまず。
  ロキの魂の欠片についての話しあいが必要だな」
地上界のものが戦いをおこそうがそれはそこにいきるものたちの責任。
あまりひどいとおそらく確実に魔界より介入がはいるようにそのように理は創られている。
ゆえにさほど重要視せずに淡々とその場をなだめ、今後の対策を話し合うべく声をあげているゼウス。
「精霊達全員に伝えて、ロキの魂の波動を調べてもらって、
  それから信用できる存在達にお願いして、回収、それしかないでしょう?」
下手に力がある魂の欠片である。
それを悪用しよう、とおもえばいともあっさりと悪用できる。
欠片そのものに意思がない以上、外からの干渉にあっさりと反応する可能性が高い。
ゆえにそんな代物がある、と一般に知られるのはあまり面白くない。
回収作業をするにしても、信用できるもの達に理由を話して行ってもらう必要がある。
「神気を感じられる存在達が一番いいのでは?」
「というか、しかし、民に何と注意をするべきなのか……」
さすがにここまでくるとこの現状が冗談でなく現実だ、そう認識せざるをえない各種族の代表者達。
今、目の前に迫っている脅威。
その力は神の力の欠片、という。
それがどれほどのものなのか、はっきりいって理解不能。
地上界に住まう存在達は、他の界の存在達と比べ、基本特殊な能力があるわけではない。
限られた時を過ごし、一番軟弱で貧弱、という認識は共通している。
地上界に住まう存在達で一番寿命の長い存在は、木々といった樹木であろう。
それ以外は長くて千年がやっと。
限りある寿命。
そういった命をもつものが地上界に存在するように振り分けられている。
何ともいえない雰囲気の中、様々な種族の代表者が、
今後の対策についてしばし時の狭間たる空間にて話しあいを繰り返してゆく……


「しかし、エリア対抗の本当の意味での本戦にディアが勝ち進むとはね~……」
どう考えても信じられないが、しかしそれは現実で。
「たまたまよ。たまたま」
そんなケレスの疑問にさらっと答えているディア。
「というかお姉様にかてるひといたら、私みてみたい」
「あら?大姉様達にはまったくかなわないわよ?私だって」
そもそも勝てる気がしない。
自分達の運命を実質握っているのはほかならぬ大姉。
かの存在がなければ自分達もこのようにして存在していない。
恒星、と呼ばれる太陽が誕生し、そして自分達のような惑星が誕生した。
そして今日までその現状がつづいている。
そしてまた、そんな営みもこの【空間】からしてみればほんの一瞬の営みであることも理解している。
そんな自分達からしてみれば、自らのうちに芽生えた命の輝きはほんの一瞬の輝きに過ぎない。
こうして触れ合っていても、過ぎてみれば幻の夢。
「とりあえず、次の試合が決まるまではだいぶ時間もあるし。
  しばらくいろんな場所をみてたのしみましょ?」
「さんせ~!」
何しろケレスもこの大会に参加したのはこれが初めて。
ゆえにいろいろな場所をみてみたい、という気持ちは強い。
時の狭間にて会議というか話しあいが執り行われていることをディアは理解している。
しかしそれは彼らが今後、どうするか彼ら自身できめること。
すくなくともディアとすればこれをきっかけにロキの覚醒を早めることができればいいのだから。
自らの心の中に閉じこもっている状況は、アングルホダもロキも同じこと。
その魂をいくつかの欠片にわけ、それぞれが様々なものに触れることにより、
その心に少しづつふれてゆき、早く目覚めをうながす。
そのためにあの道具を彼らに渡るように仕向けてみた。
本来ならばあの品は実力のあるものが手にしなければ瞬く間に力にのまれ、
道具そのものに魂ごと消化吸収されてしまう。
それでは用途を成さないのでこのたびだけは、ロキに関してのみその能力が発揮しないように細工している。
他に利用しようとすればその細工は起動せずに使い手の力によってはそのまま消滅してしまう。
それは使い手の意識次第。
欲を強く願うか、それとも強い力に願うことは自分達の定義に反する。
その倫理を守るか。
その判断は彼らにゆだねている以上、ディアとしては成り行きを見守るしかない。
うまくいかない場合はそれこそすべての生命を巻き込んで対策を考えなければならないであろう。
すくなくとも、自分自身の消滅、という可能性を視野にいれてでも行動せざるを得ないのだから。
そんなディアの心情を知るはずもなく、元気よくディアの意見に賛同し、
そのままSGエリアの観客席から他の場所に向かうためにと【道】がある方向に足をむけてゆく――


「さあさあ、よってらっしゃい。大会にいくのに一人に一つ、お守りどうだい!?」
エリアごとに別れて行われる、実戦的に近い分野。
その分野における部門別大会もおわり、今からがこの大会のダイゴミともいえる盛り上がりどき。
戦闘部門が一番時間がかかる大会であり、ゆえに他の部門もほぼエリアごとの大会は終了している。
芸術部門などにおいては、それまでの作品は別の場所にと移動され、
誰もが観賞できるようにきれいに並べられ設置されている。
芸術、美術部門等に関してはそれらを総合的にみて、第三者が投票を行い、
もっとも点数の高かったものが統計、五十名ほど選ばれ決勝戦に挑むこととなる。
五十名、という数は、このたびの総数エリアが二百あることから、
エリアごとの大会に優勝し、さらに二度ほど勝ち進めば上位に組み込むことが可能。
しかし、芸術、美術、建築部門などに関しては、全体的な総合判断となるがゆえに、
それぞれのエリアでの大会、というよりは二百あるエリアの大会すべて、という形をとっている。
それでも全員が全員、すべての作品を第三者に委託しその出来具合を問いかけるわけにはいかず、
まずエリアごとに振り分けられた存在達の総合判断がなされることとなる。
一種の試験のようなもの。
それに勝ち進むことにより、自らの腕を発揮する場に勝ち進む権利がえられる。
材料などは基本、決まっているものの、それでも申請すれば必要な材料は揃えてもらえるこの大会。
ゆえに今まで挑戦していなかった材料で芸術を追求した建物などを創る存在などもすくなくない。
建物、といっても人数が人数。
ゆえに手先の器用さをかなり問われる代物となる。
つまりは現物の100文の1以下の作品が求められる。
細かくそれでいて緻密で精密な造りをしている作品ほど評価は高い。
中には普通の大きさで創りつつ、ある程度出来上がったらそのまま圧縮術を用いて、
その作品全体を小さくする参加者もいるにはいる。
作品を小さくみせる方法は参加者の判断に任せられているので各個性がよくあらわれる。
ゆえに、建造物関係、もしくは芸術関係部門においては、
それらを展示している場所が一番人の出入りが多い、とされている。
実際、大会をみにきたものたちは、話しの種に、とこの場を訪れるものが少なくない。
そんな会場に入る道の一角において、少しかわった露店らしきものが開かれている。
いつもこの場に露店が開かれることはあまりなく、それゆえに人々が思わず足をとめる。
大会が進むにつれ、直接にこの会場に続く【道】も地上において設置され直接展示会場に入り込むことも可能。
しかし【証】をもっていない存在は展示会場にははいれはすれども、他の会場に移動はできない。
彼らが身聞きできるのは誰でも自由に入ることが許されている【展示会場】のみ。
道も会場となっている建物の中にあり、
この建物は【道】を通してでなければ他には移動できない造りとなっている。
そんな【道】からでて少しいった先に見慣れない小さな露店が一つ。
「ほう。何を売っているんだい?」
滅多にない露店に興味をひかれた展示会場を訪れた客がその露店を覗きこむ。
そこにはいたるところに様々な品が並べられており、ちょっとした小さな袋のようなものも垣間見える。
「お客さん。運がいいね。特別サービス期間中、だよ。
  ずばり、願いをかなえる石。とでもいっておきましょう。効果は願いの力具合によってかわってきますけど。
  まあ、だまされた、とおもって話しのタネにいかがです?
  金額は水晶貨クリスタ一枚。どうでしょう?」
普通に生活していれば水晶貨クリスタ二十枚で衣食住、
そのすべてが賄える。
最小単位ともいえる金額、それもたったの一枚。
確かに話しのタネにはいいお土産になりそうである。
効果は別に期待などしていない。
ただ、大会の会場で話しのタネに品物をかった、という事実があればよい。
それにざっとみたところ、願いの石の形は様々。
「すべて、一枚、なのかい?」
「ええ。ただいま開店記念セール中でどれでも一枚、です。
  ついでにかっていだけますと、石をいれる袋もおつけしております。
  何でしたら袋にお客さん希望の文字を刻むこともできますよ?そちらは別料金。
  これもまた水晶貨クリスタ一枚かかりますが」
見本、なのであろう。
露店の背後らしき場所にいくつかの大小の袋、色とりどりの袋がさげられており、
それらに様々の文字や文様が刻まれているのがみてとれる。
どうやら任意ではあるが、希望の絵柄などを袋を選べば刻んでくれるらしい。
「では、この猫型のやつを二つ、と、袋には名前を刻んでくれるかい?」
「はい、まいど~!さあさあ、他の方々もみていらっしゃい、よってらっしゃい!」
小さな露店ではあるが露店の中には最低でも三人はいるらしく、
一人が売り子、そして一人が金額を取り扱っているのか金銭管理をしており、
もう一人がせわしなく袋に何やら刻み込みこんでいる様がみてとれる。
それぞれがどこにでもいる平凡な青年であり、それぞれ目立った特徴というものがまったくない。
やがて出来上がったらしく、名前を刻んでいた定員が、
出来上がったらしき袋を金銭を管理している存在にと手渡す。
そして手渡された袋の中に、客が選んだ石をそれぞれに入れきゅっと袋の口を縛りつつ、
「はい。お待たせしました。全部で水晶貨クリスタ四枚、ですね」
にこやかな営業スマイルを浮かべつつも、目の前の客にと手渡す露店の店員。
小さな袋の中にかわいらしいきらきらと輝く猫型の石。
さらに袋には希望通りの子供たちの名前。
選んだ袋は子供たちのイメージにあわせて花柄のもの。
袋の上部にはこれまた客が選らんだ紐が結ばれており、
かわいらしい蝶々結びが施されている。
この出来で水晶貨クリスタ四枚、とは話しのネタとはいえ安い買い物。
そう満足しつつ代金を支払い、子供たちにいいお土産ができた、と喜びつつその場をあとにする客の一人。
一人、また一人とその店に目をとめ品物を購入してゆく様が、しばしの間見受けられてゆく……

「【鍵】は順調に広まっているようだな」
「はっ!」
対峙するように座っている人影が二つ。
その目の前にはそれぞれの界における状況が記載されている報告書が積まれている。
報告書、といっても【扇動者】達から報告をうけたものをまとめた資料に他ならない。
「しかし。かの力を利用して、石にあのような制約をつけるとは、さすが、だな。
  我らテケリ・ショゴスは今まで力に物をいわせてきたからな。
  ハスター・ホテップのヤツラは知力で勝負、ということか」
道具を利用したすべてを巻き込んだ陽動作戦。
範囲が広ければ広いほどその目的は曖昧になり、一番の目的を達しやすくなる。
「【印】の役目をも兼ねていますので、基本、そのままそこに移動するのは可能、かと。
  肉体ごと移動は不可能でも、【印】を目指せば精神での移動は可能、です」
そして器をのっとり、その場にて肉体を得ればよい。
それだけの力は彼らにはある。
【印】を目安にして、そのあたりのまだ形になっていないゾルディ達をとり憑かせることも可能。
魔界においてはすべてが力がモノをいう。
ゆえにどちらかといえば知力というよりは今まで力のみでコトを進めていたのも事実。
しかし時として策を講じて裏をかいたことも多々とはあったが。
「我らの一番の目的は、魔宮の奪取。そしてすべての管理を一手に我が組織の手にすること」
噂では、魔宮にはこの魔界すべてを見通す部屋があるといい、
そこにたどり着いたものは、魔界すべてを統べる力を有する、ともいわれている。
嘘かまことかはわからないが、すくなくとも、何かとてつもない力がそこにあるのは間違いないのであろう。
大魔王が鎮座しているというが、その当の大魔王は今現在、玉座にはいないらしい。
ならばこの機会を逃せば次なるチャンスはいつ訪れるかわからない。
そしてその思いはどうやら天界側のほうも同じらしく、
天界のほうも同じような言い伝えがあるらしく、ハスター・ホテップの構成員達もその力を欲している。
天界と魔界。
それぞれに異なる界ではあるが、求めているのは光と闇、その違いだけで基本は同じ。
天界側からは知識を、魔界側からは力を。
光は闇に弱く、また闇は光に弱い。
伊達に反旗組織を立ち上げているわけではない。
構成員達はすくなからずそこそこの実力をもっている。
構成員の中には使い捨てともいえる下っ端がいるにはいるが、
彼らは基本、上層部のあり方すら理解していない。
それでも、規則から抜け出して自由にしたい、と欲望を抱く輩は多々といる。
そういう存在達がそれぞれ、反旗組織に加わっている。
それは【世界】ができてしばらくして自然と出来上がった組織。
組織に身をおくことで世界の仕組みと成り立ち、そしてあり方を理解するものもいれば、
そのまま自身の欲望のまま、その事実に目をむけないままに突き進むものもいる。
そして…このたびにおける組織の上層幹部達はまさに後者。
数千年から数万年に一度、上層部の顔触れは一新される。
それがなぜなのかは、組織の存在達とて理解していないが。
理由は至極単純極まりない。
何しろ数千年から一万年。
ずっと裏から世界をみていれば、世界の【あり方】というものが自然とわかってくる。
自分達がすべて手の上でころがされていた、と判ったとき、ほとんどのものが自暴自棄となる。
そのまま完全消滅を願うもの、それでもあがこうとするもの。
それは個々の性格にもよるが。
そういった理由からも、ずっと同じ存在達が組織のトップにいた試しは【仕組み】が出来上がって後、
一度たりとて起こりえていない。
すでに布石はまかれた。
自分達の力だけでここまでこれたわけではないので多少の悔しさはあるが、
それでも、結果がともなえば後はどうとでもなる。
「すでに、種はまかれた。…さあ、我らの世界の始まりだ!」
ちょうどいい時期にいい神具が手にはいったものだ。
しかも天界側の反勢力と手をくめたのも功を奏した。
あとは、ただ、きっかけをまつのみ。
すべてに種がいきわたったその時こそ、世界は新たな歴史を刻み始める。
その光景がありありと浮かびにやり、と笑みを浮かべる彼ら達。
同時刻、まったく同じような光景が天界側でも見受けられていたりするのだが。
まさに表裏一体、とはよくいったもの。
それぞれが申し合わせたわけでもないのに同じようなやり取りをしている彼ら達。
魔界、そして天界のとある一角においてしばしそのようなやり取りが繰り広げられてゆく――


「お…おいしいっ!」
思わず顔をほころばす。
これで水晶貨クリスタ一枚づつ、というのは破格すぎる。
基本、この大会において料理部門などに登録している参加者達は、
それぞれその料金を一定とし第三者の投票を得て優勝を取り決める。
投票形式は至極簡単。
それぞれの店舗に設けられている【水晶珠】に自らがこの店の味ならば何点。
そう念じることにより投票したこととなる。
ちなみに、基本点数は一人あたり一店舗につき百点。
その点数を振り分けることによりその店の味などを評価する。
そしてまた、評価者であり客でもある一般人達はといえば、
どの店に評価をいれたかわかるように、このエリアに入ったときに特殊なカードを手渡される。
水晶に点を投じた時点でカードにもその情報が記載され、一人当たりが何店舗に何点いれたか。
それらが一目瞭然でわかるようにとなっている。
また、手渡されるカードは情報を共有する効果ももっており、
エリアの総合管理場、兼、試合結果一覧場に随時情報が伝わるようになっている。
管理場にいけばどの店が今現在、どれだけの点を獲得しており、
またどの店が一番人気がないのか、など一目瞭然となっている。
そしてそれらの店の位置はカードの裏に書かれている地図において、
どの店にいきたいか念じることにより、その店舗が光り位置を指し示す仕組みとなっている。
自分達のいる位置は青、そして店舗の色は赤。
色別に区別してあり、取り扱い方がわからないものにも利用できるようになっている。
また、視界がみえない存在からしても、それらの光景は直接、脳波に伝わるようにできており、
ゆえに視えなくても情報は随時把握できるようになっている。
「ここのエリアは全部水晶貨クリスタ一枚のところだからねぇ。
  場所によってはもっと高い場所もあるけど。私たちの収入ではこのあたりが無難でしょ?」
おもいっきり高級料理ともいえる白水晶貨ホワクリスタ一枚以上とかいうエリアもある。
味、そして高級食材をたっぷり使われた料理を好むか、
それとも一般に出回っている食材でより工夫し味を追求するか。
好みは客でもある評価者一人一人異なる。
そして、ディア達はといえば、当然後者。
そもそも自由になるお金にも限りがある。
ゆえにどうしても金額の安い【創作料理エリア】にやってきている今現在。
各店ともそれぞれの独自の工夫と味付けがなされており、低料金にもかかわらず、
かなり満足できる品々が店ごとに出店されている。
しかもそれらはその場で料理するもの、もしくは保存のきくもの。
店により売りだされている品は様々。
親切な場所は造り方などを一般にも公開している店もある。
ゆえにこのエリアは毎年、一般人…特に主婦層などにかなり好評をえているのも事実。
何しろ少ない食材、さらには安い食材でおいしい品がつくれる。
これほど便利で役にたつ情報はない。
中には携帯食料などを扱っている店もあり、各店とも味付けやその保存状況。
それらで勝負をかけている店もある。
この大会である程度の点がかせげた店、そして品物は大会に優勝せずとも、
うまく顧客などがつけばそのまま普通に市販することも可能。
何しろ勝手に噂は点をつけてくれる客が広めてくれるのである。
店側が何らかの広告などをだすこともなく、こういった場で認められた。
それだけでかなりの話題性にのぼる。
この大会で独自の料理を展開し、優勝はしなかったものの、一財産を築いたものも多々といる。
ゆえに参加者達も力をいれる。
その結果、料理の質も格段にあがる。
まさにいい相乗効果をかもしだしている。
「う~ん。そのあたりによく生えている薬草と食べられる草花。
  そしてポイントにハーブとキノコ類を加えているのがかわってるわね」
キノコの歯ごたえが他の草花の味わいをより引き立てている。
ぴりっとした味わいのあとにほんわりと広がる甘みと、そして香り。
加えられているハーブの種類によっては、味もまたかわってきており、
たとえば春を代表する花でつくられた品はまるで春の陽だまりで食事をしているかのように錯覚に陥る。
香りとは脳に直接作用するものであり、ゆえにその効果も比較的高い。
「さっきの場所のは果物と穀物をうまく揚げてあったしね」
「人間界の食べ物っておいしいから好き~!」
ディア、ケレス、そしてヴリトラ。
それぞれがそれぞれに思ったことを口にする。
霊獣界においての食事は基本、周囲の大気に満ちた【力】ですむことから、
ヴリトラはこういった味のある食事をとても好む。
時折、自ら何かを摂取することはあっても自ら作ろうとせず、基本誰かに頼む形式をとっている。
いろいろと創意工夫、という点では霊獣界の存在達は人間界の存在達に遅れをとっている、といって過言でない。
逆に天界などは、人間界にまけじ!と半ば意地になり品種改良などを徹底して行っていたりするのだが。
その結果、とてつもない生命が生まれていたりするのは知る人ぞしる事実。
様々な特性をいれてしまったがゆえに手のつけられなくなってしまった植物も多々とある。
どの界においても熱中し何かを極めよう、とおもう存在達は時として暴走する。
それは、人だけであらず、神や魔王、そして精霊といった存在とていえること。
「そういえば、いつもヴーリちゃんは基本、何をたべてるの?」
彼女が竜族、というのはとりあえず納得はした。
その竜の形体をみたことはないにしろとてつもない力をもっているのは明らか。
「普通は何もたべなくても周囲の気が満ちていれば問題ないからね。
  だからこういった味のある食べ物ってものすっごく美味しく感じるの。
  まあ、この場合はこれらの命を奪っていることには違いないんだけど」
そもそも料理する段階で、食材となったモノたちは嫌でもその命を閉じる。
それはどのような【食材】においてもいえること。
命はめぐる。
何かを食べる、ということはそれらの命によって生かされている、ということに他ならない。
そしてそれらに感謝することにより生じる【心】は【力】となり、【感謝の念】として世界に広がる。
その念の恩恵をうけて、新たな精霊などが誕生することもある。
それらの生なる念によって生まれた存在のことをまとめて【ロア】と呼び称す。
その姿は基本となった念に忠実であり、ゾルディと対局の存在、といえる。
ロアの基本の誕生の仕方は、ゾルディと変わりない。
というか、ロアもまたゾルディと同一の存在ではあるものの、基本分けて呼ばれている。
意思が新たに設定した【理】のうちの一つが【ゾルディ】であるならば、
【ロア】、という呼び名はそのありようから新たにつけられた名称、ともいえる。
ロアもゾルディと同様に様々な生命隊が抱く、強い思いが一定以上になると生み出される。
その思いの基本となる心が大概感謝の心で作られるもの。
それが【ロア】。
基本的には同じ【理】に属するのだが、【ゾルディ】のほうは比較的【負】の方面にその用語は利用される。
今でこそほとんどのものが、【ゾルディ】は負の力の結晶、最悪の塊。
そう捉えているがそのありようは多種多様。
ただ、あまりにも負の力の結晶である個体が多すぎたゆえにその名称が負に傾いてしまっただけのこと。
「…周囲の大気っておいしいの?」
空気においしい、まずい、があるのかよくわからないが、ふと素朴な疑問をといかけるケレス。
「かなり違うよ?まあでも、やはり味のついてるほうが私は好きなんだけど~。特に甘いものっ!」
いつも悪意を主に喰らっていればときおり甘いものもほしくなる。
「そんなことより、次はどの店にいってみる?」
このまま話しを続けていればまちがいなくヴリトラは墓穴を掘る。
そう確信がもてるからこそわざと話題をかえるべく話しかけるディア。
「そうね。次は…あ、ここ!今のところ第一位になってる!いってみよ!」
手渡されているカードの裏の地図には、上位十番以内に入っている店には番号が映し出される。
今現在、どの店が一番人気を誇っているか点数をつける側がすぐにわかるようになっている。
「それじゃ、いってみましょ!」
「あ、あとで携帯食料の店にもよろうね!」
安い金額で携帯食料が買えるというのはかなり心強い。
携帯食料は様々な用途に役立つ。
特に自力で生活資金までひねりださなければならない貧乏学生には心強い味方といえよう。

大会の会場の中で不穏な空気がゆっくりと確実に広がりをみせているそんな中、
ディアとケレス、そしてヴリトラのお店めぐりはしばしのあいだ、尽きることなく繰り返されてゆくのであった……


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あとがきもどき:
薫:次回でようやく、第一回目の襲撃開始!です。でもそれはさらっといつものごとくにオブラートに流します。
  あと、ヴルド王国の各国侵攻、ですかね。
  このギルド協会主催の大会をかわきりに、世の中は戦乱一直線になる予定。
  まだ他の界などはあまり介入?していませんが、今後は各界混合になりますので、あしからず。
  …さて、【マァト】がだせるのは何話、だろ?
  脳内完結予定ではおそらく50以内で終わる予定ではあるんだけどなぁ?
  ともあれ、ではまた次回にて♪

2011年4月2日(土)某日

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