まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

今回はちょっと軽め?の閑話もどきです。
とりあえず、前回いってた親衛隊云々の結成理由?をば。
この親衛隊さん…世界にそのうちに(すでにともいうが)はびこりますからねぇ~
ともあれ、今回もいくのですv

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ギルド協会学校。
通称、学園。
こちらでの言語は今まで習っていた様々な言葉より、
どちらかといえば、文字の感覚もどちらかといえばルーン文字っぽい。
まあ、基本の五十音の呼び方を把握すれば、どうにか拙いながらも会話は可能にはなるが。
それでも、やはり日常的に使用していた日本語と、そして英語のほうが話しやすいのは仕方がない。
ちなみに、なぜか専門分野においては、なぜか英語が優先され、
専門技術職などにおいては日本語が今まで住んでいた場においては優先されていた。
何でも日本語は、同じ言葉でも様ザまな使用方法があるので
特殊技術などに使用するのに便利だとか何とかという理由で。
まあ、確かに。
はし。
という文字に関しても、川にかかる橋に、部屋の端っこに、さらには食事用の箸。
この三点がひとつの言語だけで示される。
言葉のアクセント具合によってはいろいろと意思の疎通が間違ったりもしたりしたが、
それでも、基本的に細かな作業が得意でもあったらしい…おそらく、島国根性、とでもいうのであろうか。
とにかく、ひたすらに細かな作業が特異であったあの国は特殊技術部門において世界の中でトップを誇っていた。
魔科学に関しての研究もかなり進んでおり、かつて資源不測などに陥っていたかの地を救ったのも、
またその魔科学の技術発達によるものだったらしい、とそう習っている。
この世界においては、始めから精霊の力を借りた術があり、
契約の元、それらを使用することが可能、らしい。
まあ、たしかに、ほいほいと誰もが力をつかってたら自然界の力のバランスが壊れるわよね。
そんなことをふと思う。
「もっとも、原理としては、美希様達の世界でも一般的だった科学記号。
  それらに基づいていますけどね。原子などの呼び方が変化している、というだけですし」
さすがに、元素記号を用いて説明されればある程度の納得がいった。
卵だの何だのといわれてもまったくもって意味不明ではあったが。
話しを聞く限り、この世界の文明もかつて同じように進化していっていた、ということもわかった。
もっとも、この世界には魔科学、というものは発展せずに、そのまま文明の身勝手ゆえに、
滅びの道を歩むことになってしまったらしいが。
この惑星の意思が具現化している、というディアに基礎となるべきことを教わっている美希。
知識はあったにこしたことはない。
元の世界に戻れなかった場合、この世界でいきてゆくしかない、のだから――

光と闇の楔 ~意思と次代と親衛隊~

「…は~……」
いく度目のため息であろうか。
思わずため息がでてしまうのは仕方がない。
絶対に。
「…ディアさん、大丈夫ですか?」
傍から見ていても、彼女がなぜため息をついているのかわかりやすすぎるがゆえに、
思わず戸惑いつつも心配して声をかける。
「すいません。美希様にまで心配をかけてしまって…まったく、あの子達ときたら…
  …いちど、その根性を初期化…もとい叩き直さないとだめなのかしら……」
何やらさらっと何かとてつもないことをいっているような気もしなくもないが。
当人達が聞けばその場にて震えあがり、その場で土下座をしていたであろう。
…もっとも、土下座をしただけで今行っている計画を中止する、とは思えないが。
「…何かいま、とてつもない不穏な言葉が聴こえたような気がしましたけど……
  ですけど、あの方たちも悪気があってやっている、とはおもえないのですけど……
  …多少行き過ぎのところはある、とは私も思いますが……」
「に~」
結局、部屋に子猫を一人きりにさせるわけにもいかない、というので、
学校にも常に子猫、みゅ~をつれてきている美希。
もっとも、種族によっては常に【相棒】を持つ種族もいるので問題視はされていない。
「そうそう。全ては次代様とお姉様のためでもあるんだよ~!」
そんな二人の横に空気をまったくよんでいない、といえばいいのであろう。
のんびりとそんなことをいいつつも近づいてくる少女が一人。
「ヴ・リ・ちゃん?そもそも、発案者はだれ、なのかしらねぇ~?」
「い、いたい、いたい!お姉様、いたいっ!!」
ぐりぐりとそんな近づいてきた少女の頭をがっしりつかみ、
ぐりぐりと左右からその両手を握りこぶしにて、ちょっとしたげんこつをくらわしているディア。
傍から見ればかなりあるいみほほえましいといえばほほえましい光景であるが、
その拳に込められている力は並大抵ものではない。
むしろ、ヴリトラであるがこそ無事であるだけで、普通の存在がそれをうければ、
まちがいなく頭ははじけ飛んでしまうであろう。
「…そもそも、何であのようなものをつくろう、という話しになったんですか?」
美希とて当事者。
ゆえに戸惑わずにはいられない。
というか、何で自分まで巻き込まれなければならないのか、それがかなり不思議ではある。
「ううっ。お姉様、いたいよ~。えっとね。次代様。
  それはね。お姉様が先日の大会の戦闘部門で優勝したこともあり、
  この学校の中でもお姉様の人気はこっそりと上昇中であったの。
  そこに、一応人間とおもわれる次代様が、神聖、ともいわれている天界共通語を流暢に話されてるでしょう?
  しかも、お姉様と並んでいれば、これぞもう絵にかいたような光景!
  というわけで、ならばこれを利用してお姉様達の親衛隊組織をつくろうとっ!」
「だから!どうしてそこで親衛隊なんて言葉がでるわけ!?
  そもそも、ヘラにあの組織を作ろうともちかけたのもたしかヴリちやんだったわよね?」
そういうディアの目は笑っていない。
むしろ完全に据わっている。
「ファンクラブっていう名前じゃ、なんか軽い感じがしたし?」
「したし、じゃないのっ!…まったく……どこをどう育て間違えたのかしら?」
思わずぽそっというディアの心はまさしく本音。
たしかに、あのときに生きていた全ての子供たちの結晶ともいえる【ヴリトラ】を慈しんでいたのは事実。
しかし、しかしである。
このような性格に育つなどとは、【意思】とて予測していなかった。
もっとも、他の意思いわく、『それは仕方がない』となぜか異口同音で同じ返答が戻ってきたりしたのだが。
ディア自身はそう甘くしていたつもりはないが傍から見ればかなり甘やかしていたのは事実。
そもそも、自らの子供たちである生命体達に好き勝手させていたことからも、
彼女は甘い、と他の惑星に認識されていた。
多少のお灸をすえるために自然を狂わせ自然現象、という形で試練をあたえたりはしていたが、
それでも、全体からみれば壊滅的、という手段はあまりとらなかったディア。
当時生きていた全ての【魂】を保護したことからも、甘い、といわれているゆえん。
そもそも、それまで生きていた幾多の【魂】の記憶をもディアはきちんと保管していた。
魂が浄化し新たな輪廻に回れるように手ほどきをもしていた。
子供たちの願いがなるべくかなうように、心残りがないように。
始めて誕生した自らの子供がかわいかったのは事実。
その成長を見守ることがとても嬉しかった。
ゆえにかなり甘やかし、ともいえる状態になっていたのだが…他者から指摘されても、
ディアからしてみればかなり厳しくしていたつもりなのでまったくもってその自覚は皆無。
あるいみ、親が親ならば子も子、といえるであろう。
「……えっと。ディアさん?そんなこといっても平気なの?」
いくら日本語で会話している、とはいえどこで聞かれているかわからない。
ディアがこの惑星の意思が具現化している存在であり、
またヴリトラ達といった全ての生命体にとっての【母】である、というのは普通の存在には知られていない事実らしい。
ゆえに心配しつつもつぶやく美希。
「もし聞かれてたらそのあたりの記憶は改竄するから平気ですよ。
  これ以上暴走させないように、リュカを幹事に回したほうがいいかしら……」
ヴリトラが提案した、【ディアと美希を崇める親衛隊】なる組織は、
日を追うごとにいつのまにかその会員数を増やしていっていたりする。
こっそりと町の住人もその会に参加していたり、
あげくはなぜか協会関係者すらも会員になりたい、といってきている、とのこと。
そういった敬意があり、ディアはひたすらに愚痴をこぼしているのだが。
ちなみに、裏の名称はそのようなあからさまな名前ではあるが、
通常の組織の名称はといえば、【崇高なる理想組織】…何ともよくわからない名の付け方、ではある。
いうまでもなく、崇高なる存在、とはディアと美希のことであり、
暗に【第三の意思】と【次代の器】を崇めている内容となっている。
理想、とはそれらの存在そのものが生きとしいけるものの究極の理想であることから、
そのような名がつけられているらしい。
しかし、しかしである。
当事者にとってはハタ迷惑なことこの上ない。
それでなくても、ディアとすれば、天界より発生してしまった【補佐官親衛隊】なる組織が、
今や全ての界においてほとんどの主要な役職についている存在達が隠れ隊員になっている、
という全てをなかったことにしたくなるような現状になっているのを知っているだけに、
これ以上厄介事を増やしてほしくない、というのが本音。
こっそりと補佐官の姿を模した様々な品々などが作成されていたりするのだが、
さすがにそれらは【意思】の仮初めの姿を模したもの。
ゆえに代用品とはいえすぐさま【意思】にと伝わり、
もののみごとに形ものこらずに塵と化すように設定してある。
そのせいか、なぜか他の品を用いて比喩するようになっていたりするようなのだが…
そもそも、補佐官、という立場もあまり知られれば面白くないのも事実。
ふとしたはずみで王と補佐官が同一、とばれないとも限らない。
もっともそのときには全ての記憶を消してしまえばいいだけなのではあるが。
かつてのように自分が直接にかかわらず、見守るだけの存在でありつづける。
というのは今の現状においては好ましくない。
とりあえず、各界の代表者がしっかりとしてくれない以上、今の仕組みを変えるつもりはない。
しかし、【人】としての模倣品にそれを施せば、普通の存在ではない、とあからさまにいっているようなもの。
ゆえにそれらの品を止める手段はなきに等しい。
「というか、普通に英語を話しているだけで、何で神聖視されるんでしょうか……」
そのあたりの常識の違いもいまだに慣れない。
なぜか伝道師サクラもまたどういった手段を用いたのか、
この学校の保険医に入り込んでいたりする。
ちなみに、もともといた保険医はといえば、各村や町などで多発しているけが人達。
それらの人々の往診と治療をするために、ギルド協会側からの依頼で様々な場所へと出むいていっている。
そんな状況であったがゆえに、治療を行えるというサクラの存在は、
協会側からしてみればまさに願ったり、かなったりの申し出であった、といえる。
「まあ、英語を天界共通語に設定した、というか、
  ゼウス達があの言語をきにいっちゃったからねぇ~……」
彼らを生み出した当時、伝道師達は様々な言語で会話をしていた。
意思はといえば、その心を通じて念波で彼らにその心を伝えていた。
精霊言語の元となっているフランス語。
フランス語を【戒めの旋律】にする、ということはすでに決定していた。
しみじみと日本語…傍から見れば、意味不明な言語で会話をしているディア達を不思議そうにみているクラスメート達。
と。
「ディアさん!次の新しい隊員用の会報誌にぜひともディアさんの日常をとりあつかわせてくださいっ!」
ばたん!
いつのまにやら、学校の内部において、親衛隊広報係、というものまで出来てしまい、
日々、いつのまにか記者係りでもある生徒に追いかけ回されている日々。
もっとも、ディアからしてみればかれらをまくことはいともたやすいこと。
記者達はどうやって追跡をまかれたのかすらわからないまま、毎度途方にくれている。
しかし、しかしである。
ヴリトラがなぜか提案し、そして始めはただの同好会のような扱いであったそれは、
今や大半の生徒や教師が面白がって、ということもあり参加している組織になりあがっていたりする。
その間、わずかほんのひと月もたっていない。
何しろ理解不能ともいえる、現象が多々とおこっていたそんな中。
あるいみ娯楽ともいえるようなものがとびこんでくれば、人はまず好奇心や少しばかりの平穏をもとめ、
すぐさまそれらに飛びつく傾向をもっている。
王都の中においては、突如としてゾルディなどが発生する、という現象はいまだに起こっていないものの、
王都の外においてはそのような現象はいまだに多々とおこっている。
王都の中でそれらの現象が起こらない理由は至って単純。
王都に仮初めとはいえ滞在しているヴリトラがつまみぐい、とばかりに
それらの強くなりはじめている念を喰らっているからに過ぎない。
美希がこの学校に通い始めてはやひと月。
それなりにクラスメート達ともなじみはじめ、カタコトながらもこちらの世界の言葉を話せ始めている。
まあ、美希が住んでいた場所のことを聞かれても、正確に答えられるはずもなく。
そもそも、異世界、すなわち他の惑星、さらにいえば他の異なる銀河よりやってきた。
と説明してもおそらく絶対に理解不能、であろう。
ここに住まう存在達はそういった概念をもっていない。
むしろ、どちらかといえば夜空に輝く星々は意思をもっており、生きている、という概念をもっている。
ある意味、正しい、といえば正しいのではあるが……
まさか人がその技術のみでその【星】にたどり着けることができる、など誰も夢にもおもわない。
そういったことができるのは、選ばれた力ある存在達のみ、そう思っていたりする。
完全に智能る存在達が傲慢な考えなどを抱かないようになったときこそ、
その方法もありえるのだ、とその考え自体にかけている枷を取り除くつもりではある。
彼らは自分達の思考に枷がかかっている、とはゆめにもおもっていない。
しかし、その枷は必要不可欠なるもの。
未熟な知識と技術で事を行えば必ずその先には失敗がまっている。
それも惑星規模で。
惑星規模の範囲に入らないものならばその枷は稼働しないように設定されている。
それらは魂にかけられている、いわば楔。
いつの日かその楔が取り除かれたとき、この恒星群に住まう存在達は、
あらたな恒星群へと進出してゆくことも可能。
今はまだ、それぞれの場所より使者として使いものもがきているだけに過ぎないこの地。
このまま発展してゆくか、それともそのまま発展せずに平凡極まりなくすすんでゆくか。
それはこの【太陽系】に生きている存在達へのあるいみ試練。
「は~…また、その話し?じゃあ、このたびはとりあえず、魔界における存在達の説明で我慢しておいて。
  前回はたしか霊獣界の特性と主たる生体を話したわよね?」
ちょうどいい機会、ということもあり、きちんとした知識をこの機会に訂正しておこう。
という意味合いをこめて、なぜか世界の様々な【理と仕組み】についてこれまで説明しているディア。
その内容があまりに濃い内容であるがゆえ、また隊員でなければ会報を手にすることはできないゆえに、
逆に隊員を増やしていっているハメになっている、とはゆめにもおもっていない。
「とりあえず、このたびはじゃあ、魔界における主たる悪魔達の話しでもしましょうか。
  あと地獄界における定義と理と……」
普通は知りえるはずのない知識。
しかしその知識全てをなぜかこのディアという学生は知っている。
それだけでもかなり興味をひかれてやまないというのに、当人はそのことにさっぱりもって気づいていない。
ディアからしてみれば、それら知識は当然であり、
そもそもそれらを創ったのは他ならないディアでもある。
ゆえに、知らないほうがどうかしている、といっても過言ではない。
とりあえず誰から聞いたか、ということに関しては、アスタロトやアテナから聞いている。
ととりあえず無難なところを説明していたりする。
もっとも、彼らからきいた、というのではなく、
『アテナ達に……』
といって言葉を濁しているがゆえに、それを聞いた相手側が都合よく解釈しているに過ぎないのだが。
しばし魔界についての説明を記者達に話しているディアから少しはなれ、
「…なんか大騒動になってるのってこういう説明も原因じゃないのかなぁ?
  って私はおもうんだけど、気のせいとおもいます?ヴリトラさん?」
「ううん。おもわない。お姉様ってそういうところかどこか抜けてるんですよ」
ぽそっとそんな会話をしている美希とヴリトラ。
おそらく、ディアが普通は知りえるはずのない情報をこれぞ好機、とばかりに、
これまでも幾度通達してもまた伝承しても正確に伝わらなかった世界における真実の理。
いくら何でも記録として残る代物に書かれた以上、その知識が湾曲してつたわることはまずありえない。
それをみこしてのディアの行動。
しかし、その行動は逆にディアに対する興味を協会側からにしろ、
国側からにしろもたれている結果になっているなど…ディアはまったくもって気づいていない……
そんなディアをみていると、ふと亡き義母を思い出す美希。
その天然さというかどこか抜けている様は、何となく義母をおもわせる。
そう、あの出会いのときを――


ここ、どこ?
ふときづけば見知らぬ場所。
それどころか、自分がどうしてここにいるのかもわからない。
見渡せばあるのは壊れた瓦礫の山と迫ってくる炎と煙。
どこからともなく絶えず聞こえてきている嗚咽と叫び声。
何をいっているかも理解ができない。
『…おじょうちゃん、ひとりなの?』
ふと自分にむけて声をかけられた。
気がつけば、自分の目線に腰をおとした目を少しばかり腫らしている女性。
それにより、自分の背がかなり小さいことを自覚する。
自分がかなり小さいのだ、とそのときに初めて理解した。
普通に考えればどうしてそんな常識的なことすらもわからないのか、とおもえるであろう。
しかし、本当に何もかも、自分の名前も自分がどのような姿形をしているのか、すら。
本当に何も覚えていなかった。
そんな自分に手を差し伸べてくれたその瞳に涙を少しばかりうかべている一人の女性。
後に知ったことではあるが、そのとき自分がいた場所は大地震により壊滅した町であり、
地盤も鎮火しさらには火山も噴火して生存者は望めないであろう。
そう呼ばれていた場所であった、ということ。
場所、というのは違和感があるかもしれないが、その異変は惑星規模でおこっていたらしく、
ゆえに、その小さな島国においてもその異変は躊躇なく襲いかかった。
そんな状況の中、娘の生存を信じ、探し続けいてた一人の女性。
頭ではわかってはいた。
助けられなかった愛する娘。
仕事先から娘を迎えにったその先で、目の前で娘が預けられている園が突如として消失した。
…正確にいうならば、地下より噴き出たマグマにと一瞬のうちにと飲み込まれ、
地面ははぜわれ、痕跡すらものこらなかった。
直後に割れた大地は元にもどったものの、しんじたくなかった。
否、信じられなかった。
どこかに避難していてほしい、その願いをかけてずっと娘を探し続けていた。
そして見つけた一人の少女。
彼女の娘とほぼ同一といっていいほどのその容姿。
心のどこかで違う、とはわかっていた。
だけども心のよりどころがほしかった。
だから…彼女を自分の娘、として育てることにした、美希の養母。
美希もその話しをきき、彼女が保護してくれなかったら自分は今生きてはいない、と自覚している。
養母はいつもどこかが抜けていた。
しっかりしているようで、重要なことがすっぽりと抜けていた。
その都度、その穴埋めをほとんど美希がしていたようなものなのではあるが。

その養母の行動と、今のディアの行動は規模が違えどよく似ている。
だからこそ、なのだろう。
どこか傍にいたら安心できるのは。
自分に対し、包み隠さず真実を話してくれた、という感謝の気持ちも心のどこかにあるにはある。
しかし、美希もまた自分の気持ちの全てが理解できるわけではない。
その気持ちが一体何を示しているのか…

全てを理解したそのとき、美希は美希ではなく、【器】として完全に覚醒することとなる――


『…ちっ!ここも違ったか……』
波動は確かに感じたというのに。
しかし、どうやらここも外れ、だったらしい。
『仕方ないだろう。何しろ波動はどこにでも満ち溢れている』
思わず愚痴をこぼす仲間に対し、冷静に突っ込みをいれる。
ふわふわといくつも浮かぶ光の球体。
様々な色彩のそれらは、それぞれがそれぞれに意思があり、そしてまた一つの生命体を成している。
『通常時間でいったいどれだけかかれば見つかる、というのだ?』
『そういうな。まだ銀河は一週もしていないぞ?』
そう、いまだにまだこの銀河の回転速度は一週もまわっていない。
もっとも、中にいるちょっとした銀河系などにおいてはようやく二、三度ほどの周期を終えたころであろう。
『しかし、はやくしなければ、器が継承の儀を終えればどうにもならないぞ?』
もしくは覚醒してしまえば彼らとて手だし不可能になってしまう。
それでは意味がない。
『全てを深遠なる空間にゆだねること。それらが我らの主の願いでもあるからな』
そもそも、器となるべき場所があるから様々な思いも産まれ、新たな命もうまれゆく。
しかし、始めから何もなければそのような思いをすることもない。
彼らの主いわく、そうなれば彼らは苦しみも悲しみも何も感じることなく、
常に平穏に在ることができるらしい。
ゆえに、彼らの主につき従うものは少なくない。
『とりあえず、偵察隊をも使ってはいる。新たな情報がはいっている。
  偵察隊を撃退した区域の銀河群が千、銀河団がひとまず百、ということだ』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
確かに偵察隊そのものにはさほど力はない、といってもいい。
しかし、多少の力をもっている偵察隊を駆逐できる銀河ともなればそれなりに強い意思達が守っていることとなる。
『ヴォイド様はそれらをどうとらえているのだろう?』
『ヴォイド様はそれらを全て把握されている。何しろヴォイド様、だからな』
そう。
彼らが主、としてつかえしものは、彼らにとっても崇高なるもの。
そしてまた、どこにでも存在しえる存在。
この銀河を構成している命を管理するものが【マァト】であるならば、
何もない無の空間を管理しているのが【ヴォイド】といって過言でない。

かつてどこかの世界の研究者と科学者たちがいっていた。
銀河系等の集合した超銀河団は、何も存在しない空間……
すなわち、超空洞を取り巻くように膜状に連なって形作られている。
ちょうど石鹸を泡立てた時のように幾重にも泡が積み重なって、宇宙の大規模構造を構成している、と。
銀河団の分布はいわば石鹸水を泡立てたときの泡の分布に近い、と発表したとある文明の科学者。
あるいみマトをえているといえば得ているその発表。
さらに詳しくいうなれば、それら全てを一つの集団としてまとめている意思が【マァト】であり、
そして泡の中の空洞、それこそが【ヴォイド】といって過言でない。
その科学者はそれら全てに【意思】が宿っている、とはゆめにも思ってはいなかったらしいが……

そう。
だからこそ彼らは【主】につき従う。
どちらにしても、いずれは、全ての膜は内部の空洞に取り込まれ…やがて消えてゆく。
それが定め。
そこに何らかの力が加われば、新たな命の灯ともなる。
安らかなる何ものにも邪魔されない理想郷。
そのためにも次代の器であるまだ覚醒していない、
その【意思の力】を扱えないうちに、【ヴォイド】のうちにと取り込み消滅させる必要がある。
そうでなければ、覚醒後では、各膜の力が強さをまし、しばらくまた手だしができなくなるであろう。
これまでは、ちまちまと小さな銀河団の中に存在している銀河を消滅させることを主としていた。
しかし、今回だけは勝手が違う。
うまくすれば一つの意思を葬ることにより、長年にわたる祈願が達せられる。
だからこそ、全ての銀河に偵察隊を放ち器の誕生の波動を感じたあのときより監視を続けている。
それでもいまだに器が見つかった、という報告はいまだない……


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あとがきもどき:
薫:そういえば、このお話し、あるいみ科学のお話しのような気も(爆
  いあ、術などに関しては、原子だの粒子だのとでてくるし。
  銀河構成などにいたっては、銀河団だの超銀河だの。
  さらにはラスボスさんでついに超空洞もでてきたし(笑
  回想的なものでさらっと学園生活さんはながして、そろそろラストエピソードへ…
  ともあれ、ではまた次回にて♪

2011年4月30日(土)某日

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