まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
なんかふとオリジのお話しを思いついたので(まて
全体的には長いけど、短編もどきにするかはたまた連載にするかはただいま不明。
がしかし、短編にするとなると主人公の正体は判らずじまいになるのは明白(こらこら
とりあえず一つの区切りというか始まりを打ち込みたいとおもいますv
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どくん。
何が、というわけではない。
だけども確かに、『世界』が揺れた。
『世界』が揺れるなどあり得ない。
だけども確かに『感じた』のも事実。
「王!王!主よ!今の揺れは…っ!」
とにかくも『王』に確認をしなければ。
ゆえにこそカツカツと足音を鳴らしながらも真っ白い宮殿の中を駆ける数名の人影。
彼らのきている服はツギハギのない一枚の布のようにもみえなくもない。
腰のあたりで様々な色の紐のようなもので結ばれており各自上半身にていろいろと着崩しているのが見て取れる。
彼らの『王』であり『主』が鎮座しているのは宮殿の最深部。
否、この『世界』の中心部でもある。
滅多とあえるものではなく、ごくわずかな者たちのみが謁見を許されている。
どこまでもはてしなく続くかのような天井を突き抜けるような巨大な扉。
その扉には様々な文様が刻まれており細かな細工が施されている。
一人がその扉に手を当て何かをつぶやくと同時。
ほのかに扉がひかり、ぽっかりと一部分のみに道を開く。
「「王!!」」
真っ白い空間。
その奥に薄いペールのようなものがありその先に彼らの『王』が常に鎮座している王座がある。
彼らとて『王』に直接目通りできることなどめったにない。
いつもこの謁見室を通して『お言葉』を受けている。
唯一といえば『王』の側近が例外中の例外で『王』の玉座に近づくことを許されている。
いつもならここで自分達がはいったときに何らかの反応がある。
しかし
・・・・・・・・・・・・・・・・・
今日にかぎってその反応がまったくない。
と。
ゆら。
玉座のあるベールの中で人影が動くのが垣間見え
あわててその場に膝まづくものの、そこから出てくる人影を目にし思わず目を見開く彼ら達。
「長!」
そこからでてきたのは彼らの長であり、そしてまた『王』の側近たるもの。
「おまえたち……」
こころなしか何か顔色がわるいような気がするのは気のせいか。
ふわり。
風もないのにふわり、と背後のベールが揺れる。
その奥にある王座。
そこに常にすわっているはずの…人影は…みえない……
光と闇の楔 ~はじまり~
「う~ん。平和」
吸い込む空気がここちよい。
「さて。と。うるさいやつらにみつからないうちにとっとといきますか」
きらり、と太陽の光に反射してその髪が一瞬銀色にと光る。
よくよくみれば銀色のような灰色のようなそれでいて白髪のようなそんな髪の色。
長い髪を後ろで一つにたばね、さらにたばねた髪を紐で結び背後に垂らしている女性が一人。
肌の色は曇りのない透き通ったまでの肌色。
服装もシンプルなれどおそらく上質な布で作られているのであろう。
しわ一つなくそれでいて上下の服が質素ながらも女性の容姿にしっくり溶け込んでいる。
整った顔立ちと深い青い瞳は見た人を一瞬虜にするほどの容姿の持ち主。
なれどその服装ゆえかぱっと見た目にはその容姿がさほど目立っていないように傍目には垣間見える。
「まずは、ギルドにいかないと…ね」
ここで生活してゆくためにはまずはギルドにどうしても登録しておく必要性がある。
そのために『首都』にやってきたのだから。
大きくのびをしながらも、その腰に似合わない長剣をさしている女性はそのまま街のほうへとむかってゆく――
「The earth does to relieve nature with pure water
light in the dark how many other and seeing to all lives ~♪」
道行く人が首をかしげる。
おそらくは旋律にのっていることから何かの歌、なのであろう。
王都テミス。
光の主神を神と仰いでいるテミス王国の首都。
この世界はいくつかの国に別れており、その国々が様々な神々を信仰している。
闇の神、竜の神、精霊の神、そして光の神。
精霊の神とは精霊王達のことを指し示す。
闇の神とは俗にいう『魔王』を指し示している、といわれている。
この世界には精霊、魔族、神族といった多々の種族が存在する。
そしてその中に『人』という種族も含まれる。
人という種族はその他の種族とことなり命の期限もみじかくまた力もよわい。
しかしゆえにこそ他者と力をあわせて道を切り開き、今では大地に様々な国々を設立するまでに至っている。
他の種族がその本能に忠実という特性からいえば人、という種族はそれにあてはまらない。
しかし共通するのはすべての種族には『心』がある、ということ。
しかし…そのことを『人』という種族はおざなりにしているのも…また、事実。
「あ、あった♪」
見た目十代前半のかなりの美少女、だというのになぜかすれ違う人々はあまり気にも留めずに目的地にとたどり着く。
白き石が敷き詰められている道。
白は神々の色の象徴、としてこの国ではあがめられている。
それゆえに建設物などに使われている石も主に白。
石の形をそれぞれに整えそれらをくみ上げて基本、家々は建てられている。
石のみでは強度不足に不安があることからそのつなぎに特殊な土が使われる。
もっともそれらをこなすのは専門職ともいえる技術をもったものたち。
基本、それぞれの専門職につくものはそれぞれがとある組織にと登録している。
その組織を一般的にギルド、と呼び称す。
建設にかかわる職人たちが所属するギルドは建設ギルド。
商人などにかかわるギルドを商人ギルド、などなど。
そしてまたそれぞれのギルドを統括し育成するのがギルド協会本部。
統括している、とはいえそれぞれ各自が独立しているのがこの組織の特徴。
何かがあれば本部のほうから手助けを願うことができる、という形をとっている。
もっともそれぞれのギルド組織には位置づけ、というものがあり実力ごとにその等級が示される。
等級は各自のギルド組織に統一されており、一番したの等級がG等級、別名、Gランク、と呼び証される。
また、最高級の等級所持者は○星、といった形でも呼び証される。
もっとも、普通に暮らす人々にはそれらはあまり関係ない、といえばそれまでなのだが。
扉の前には獣の頭のような形をした模様がかれている看板がかかっているその建物。
ギィ。
お目当ての建物をみつけその出入り口の扉をかるく押す。
建物にはいってすぐにいくつかの机と椅子があり、幾人かがそれぞれ椅子に腰掛けて座っているのがみてとれる。
ちらり、と入り口から入ってきた人物を幾人かがかいまみるものの、そのまますぐにその視線を元にと戻す。
出入り口からはいってきた人物はどうみても子供。
そのわりに体にあわない長剣が腰にさされているようであるが。
なんだ、ガキか、というような声もちらりと耳にはいってはくるがそれを意に介することもなく
そのまま建物のなかにと足を踏み入れる。
いくつかの椅子、そして机が置いてあるさらに奥。
カウンター式の机のその奥に幾人かがせわしなく動いている。
そちらに近づいてゆくと受付係りと思われる女性がにこやかに
「いらっしゃいませ。ギルドへようこそ。本日は何のご用件でしょうか?」
接客用の笑みを浮かべてやってきた『客』に対して問いかける。
「すいません。ギルドへの登録を申請したいんですけど・・・・・」
ここにやってきた目的はギルドへの登録。
ゆえにこそ単刀直入に用件をいう。
「お客様はギルドのご利用は初めてでしょうか?」
みたところ目の前の客の少女はどうみてもまだ十代のように垣間見える。
となれば大体の見当はつくがとりあえずこれも職務であり規約のひとつ。
それゆえに目の前の少女にと問いかける。
「あ、はい」
「それでは、まずはじめからご説明いたします。お時間はよろしいでしょうか?」
「はい。大丈夫です」
「では、こちらへどうぞ」
このままたったまま説明をしていればほかの客の迷惑にもなりかねない。
ゆえに初心者などに対してはそれようの部屋が用意され、
今後のこともあるがゆえに丁寧に説明がなされる規則となっている。
そのまま案内されるがままに別室へとギルドへと足を踏み入れた少女は移動してゆく――
「ようこそ。ギルドへの登録申請、ありがとうございます。まずギルドの仕組みをご案内させていただきます」
担当者となっている人物。
黒いローブに身を包んだ男性が時間をおかずに部屋にとやってきて、対面にとすわり説明を開始する。
ギルドへの登録、といってもすぐに登録されるわけではない。
ギルド登録は基本、信頼が第一。
何しろ身分を示す身分証明書の役割をも果たすのでそうほいほいと登録発行はしてはいない。
とはいえ最低ランクについてはあまり審査することもなく登録は可能。
「お客様はまず何のためにギルドへの登録を申請なさいましたか?」
それによって説明する内容がまたかわってくる。
「えっと。学校協会に通いたいのですけど、なにぶん、身内も誰もいなくて・・・・・」
うそではない。
身内、といえるものはいない。
家族に近いモノたちはいれども、彼等にたよるきなど毛頭ない。
そもそも、そんなことをすれば本末転倒。
まちがいなく問題になるのは明白。
そんな少女の返答に動じることなく、
「わかりました。それでは一番簡単なギルドへの登録をまずはじめにお願いいたします。
とはいえ、こちらの登録は試験を要します」
試験の内容はごく簡単。
いくつかの依頼がある中から自分ができそうな依頼をみつくろい、それをこなす、というもの。
人はそれぞれ得意分野、というものがある。
特にこの世界においては人それぞれ、種族それぞれに分野は分かれている。
「あ、はい」
とりあえず説明はおとなしくきいておくに限る。
それがたとえ知っていることであったとしても規則は規則。
いいつつも目の前にすうまいの紙をざっと広げてくる紙、
といっても獣の皮を薄く延ばして乾かした簡易的なものと、草を特殊な方法で溶かして乾かして作成したもの。
紙の種類も多々とある。
繊維質が多いい草木などが紙の生成には重宝され、中にはかなりの高額取引がなされているものもある。
今目の前に並べられた紙は一般の人々も簡単に手にはいり、また作成できる品々の部類にはいる紙ではあるが。
「はい。名前は…ディアさん、ですね。年齢は・・・十三。確かに。仮登録は完了です」
目の前のギルド登録申請にきた少女。
この世界において、十三、という年齢は成人したとみなされる歳となる。
ゆえに、保護下のもとに生活していた子供たちはそれ以後は大人としての自覚と自立を促されることとなる。
とはいえ所詮はまだ子供。
庇護がなければ生活は立ち行かない。
親や保護者といった存在がいる子供たちならばいいが孤児などといった存在に対してはまた話は別。
それぞれが国、個人で経営している孤児院と一般に呼び証される施設は余裕がない。
ゆえにこそ十三という歳となれば施設からでていかざるを得ない。
保護を失った子供ができることなど限られている。
知識がある子供はギルドへ赴き自分の今後を決めることもできるものの、知識のない子供は悪意あるものの餌食となる。
それらを防ぐために国などが未来を担う子供の保護を優先的に執り行っているのがこの世界の実情。
「それでは、この中から自分がやってみよう。という依頼を選んでください」
はじめから依頼をこなせる、なとどとはおもってなどいない。
これは当人にきちんと責任があるか否か、を見極めるもの。
自分で先を決めることができなければこの後、ギルド員としてもやっていけない。
その場合はどこかの別の要請施設に託す、という方法をとる形となっている。
「じゃあ、これを」
ひとつほど目につく依頼を迷わず選ぶ。
「薬草採取、ですか。ディアさんは薬草に興味がおありですか?」
「あ。はい。独学ですけど。自分でいろいろとつくってみてるので」
なるほど。
親のいない子供にできることは限られている。
が、薬草などは普通にどこにでも生えているものから特殊な場所に生えているものまでさまざま。
しかしその組み合わせ次第によっては毒にもまた精巧な薬ともなる。
それに何より、『術』も使えずお金もない子供にとってまず無難な選択、といえば選択。
人は生きている限りどうしても怪我や病気、というものに対して無縁ではいられない。
自分でどうにしよう、とおもいたてばおのずとどうしても一番初めにまず薬草に目がいくのは道理。
中にはそんな素人の独学で世の中にでた効果な薬もあるのだから一概に独学、といえどもあなどれない。
下手に知識があるものより、何もしらない自力で知識を得たもののほうがよい結果をもたらすこともある。
そんな今までの経験上、少女の言葉に思わずうなづく担当者。
「しかし。この薬草採取にたいしては注意事項がいくつかあります。それでもよろしいですか?」
「はい」
どうやら意見はかわらなそうである。
まあ、薬草が生えている場所は『生息地』とは離れており問題はないといえばないのだが。
それでもそこに生息しているとおもわしきものの相手があいて。
「それでは、注意事項の説明を開始いたします・・・・・・」
少女・・・ディアが選んだ依頼内容について、しばし担当者から説明がなされてゆく様子がその場において見受けられてゆく――
「しかし、それにしても・・・・・・」
歳のわりに落ち着いている子供は今までも幾多とみている。
無理をして大人ぶっている子供、そしてまた大人の中でそだったがゆえに甘えることなく育った子供。
しかし今回申請にやってきた子供は今までのどの部類にも入らなかったようにおもう。
淡々とした受け答えは逆をいえば大人よりも落ち着いていた。
何よりも独特の雰囲気。
よくよくみれば目鼻もしっかりとととのっておりかなりの美少女だ、というのに。
当人がもつ雰囲気なのかはたまた服装がどこにでもあるような服であったがゆえか。
はたまた、限りなく銀色に近いようにみえた白に近い灰色の髪のせいなのか。
そこにいて当たり前、というような雰囲気をもっていたのも事実。
一人で採取にいく、といって出かけていったが気にはなれどもなぜだか大丈夫、という不思議なまでの確信もある。
「まあ、ああいう子もいる、ということでしょうねぇ~」
十人十色。
人それぞれ。
とはいえいつまでも先ほどの子供にかまってなどはいられない。
彼らをまつものはまだまだ幾多といるのだから。
あ~・・・なんか、どっちも騒がしくなりかけてるし。
いつまでも庇護下のわけにはいかないというのがわからないのであろうか。
あのものたちは。
それでなくてもここ最近はどうも甘えがでてきているようにどちらも感じられた。
勝手に行動するものも多々とでてきていたのも事実。
手を差し伸べるだけでは成長がない。
時には突き放すことも大切。
本来ならばどうにかしなければならないのだから。
「さて。と。ここね」
そんなことを思っていると、やがて目的の場所にとたどり着く。
目の前に広がるは鬱蒼とした森とそれに続く山。
山、といってもいくつかの山が連なっている程度でさほど大きなものではない。
山そのものの高さもさほどなく、街道さえきっちりとほどこしてありさえすれば山越えも可能。
もっとも、この山の周辺には街道、といった本格的な街道は整備されておらず
基本自然にできた獣道が街道代わりとなっている。
ほのかな暖かい風がふわり、と周囲には漂っている。
そのことがとてもうれしい。
「……あ」
かさり、と森に足を踏み入れるとほぼ同時。
風にのり間違えようのない『怒りの波動』が伝わってくる。
どうやらこの波動は森の奥のほうから来ているらしい。
「……ほっといてもいいけど……」
きになるのは別の波動。
怒りの波動とともに戸惑いと悲鳴のような波動もまた感じられる。
「……まったく……」
思わずため息がこぼれでる。
その波動から何が起こっているのか簡単に予測はつく。
とはいえこのまま見て見ぬふり、というのも好ましくない。
「なんでいつもいつも……」
ぶつぶつ文句をいいつつも、『波動』が感じられた方向へと彼女は足を進めてゆく。
『るぐおおおっ!』
雄たけびが周囲に響き渡る。
見上げれば周囲の木々よりも大きな巨体。
緑色の鱗におおわれたその体。
その口から相手を威圧するような雄たけびが発せられる。
「…く……」
まさかこれほどまでとは。
たしかに相手は『竜』。
自然の力が具現化した生き物、とすらいわれている存在。
しかしまだ目の前の生体はさほど歳を重ねていないはず。
そもそも人の姿にもなれなければこちらに話してくる様子もない。
その背後のほうでは一回りくらい小さな同じく緑色…こちらは新緑色、といったほうがいいであろうか。
同じような生体が地面の片隅に小さくなりつつねそべっている。
必死で何かを抱き込むようにしているのが垣間見える。
あれを手にいれれば生活は安泰。
噂を耳にしてここまでやってきた。
ゆえにひくわけにはいかない。
ばさっ。
目の前の竜がその背の翼を羽ばたかすと同時に周囲に突風が巻き起こる。
しかし突風、といってもさほど強いわけではない。
そのことがさらに目の前の生体がまだ若いということを物語っている。
まだ若い竜相手ならばどうにかなる。
そう世間一般ではいわれている。
だからこそあきらめない。
否、あきらめきれない。
目の前に魅惑されてやまない『お宝』があるのだからなおさらに。
構えている剣を構えなおし、
「どりゃぁっ!」
勢いをつけてそのまま目の前の竜にむかって走り出す。
対峙している竜もまたその長い首をおもいっきり伸ばし大きく息を吸い込む。
竜の吐きだす攻撃と男の剣技。
それぞれが今まさに解き放たれそうとなったその刹那。
「やめなさいっ!!」
その場に第三者の声が響き渡る。
思わずその声のほうを振り向けばこの場にいるはずのない少女が一人。
片手をその腰にとあてて自分達のほうを鋭い視線で視ている様が見て取れる。
「女!邪魔をするなっ!」
『るうぉっ!』
しかしやめろ、といわれてはい、そうですか。
というわけにはいかない。
ゆえに攻撃をそのまま繰り出そうとし……
『双方とも、やめなさい!といってるでしょぅっ!!』
きいっんっ。
頭に響くような重い声。
頭におもいっきり打ち付けたような痛みを感じ攻撃の手が思わず止まってしまう。
竜のほうも同じであるのかその手を頭にあてて何やら悶えている様が見て取れる。
「あなたたち。何考えてるの?何のための言葉があるわけ?」
冷めた声がそんな彼らに対して向けられる。
人間にそういわれる筋合いはない。
ゆえにこそ竜語にて、
『邪魔をするな』
そういうものの、はたからは竜が何かほえているようにしかとらえられない。
「まったく。そりゃ、まだ若い竜が人の言葉を話せないのはわからなくもないけど。
脳内に直接言葉を伝える方法もあるでしょうに。それとあなたっ!」
「な…」
いきなり何やら声をかけられ思わず言葉に詰まってしまう。
というかどうしてこんな場所にこんな少女がいるのかすらも皆目不明。
見たところ十代そこそこ、といったくらいであろう。
その青い瞳が静かにそれでいて鋭く竜、そして男を見据えている。
「あなたも何かんがえてるわけ!?そもそも、子供をもつ竜族に対して攻撃しようとするなんて。
あなたは世界を混乱させたいの!?」
少女の言葉の意味がわからない。
「お…俺の邪魔をするなっ!」
声がなぜかかすれるがそれでもゆずれない。
というかこんな少女にせっかくの金儲けの手段を邪魔されたくはない。
「うるさいっ!そもそも、あなた、自分が何をしてるのかわかってるわけ?
そもそも、竜族の成長過程とかわかってないでしょう!?
それと、そっちも!家族を攻撃されていきりたつのはわからなくもないけど。
そんな怒りの波動をうけた子供がどうなるかわからないわけじゃないでしょぅっ!」
目の前の少女の言葉に思わず目を見開いてしまう。
確かに頭に血がのぼっていたのは事実といわざるをえない。
えないが…いわれてみれば確かに、それに対してまったく考えていなかったのも事実。
「あなたも!いきなり家族を攻撃されて怒らないものがいるはずないでしょう!?
何のために考える心をもってるわけ!?あなた馬鹿?」
「なっ!馬鹿とは何だ!馬鹿とはっ!」
「馬鹿は馬鹿、よ!あなたはなら、自分の家族がいきなり理不尽な攻撃をうけて冷静でいられるわけ?
それとも何?まさか人間以外の生物の感情面なんか関係ないっていうわけ?
そんな傲慢な考えが破滅や壊滅をもたらすのがどうしてわからないのっ!」
どんな生物にも心はある。
それは声にだせない生き物にしても然り。
しかし『言葉』が通じないだけで『人』という種族は他の種族をないがしろにする傾向がある。
それは思い上がりである、と『人』はなかなか認めようとしない。
その結果どんな結末を迎えることになるのか、などと考えもしない。
「金儲けの邪魔をするなっ!」
相手のいいたいことがわからない。
ゆえにこそ思わず口調を荒くする。
「……は~…あんた、ちょっと修行してきなさい」
「……なっ……」
いつのまにやってきたのか目の前にきていた少女が無造作に男の体に軽く触れる。
その刹那。
ぐらっ……
男の意識はそのまま暗闇の中にと沈んでゆく。
「まったく。いつの時代も傲慢なやつがでてくるというか進歩がない…というか。
そもそも、あなたも。冷静に対処しないと子供が大変なことになるでしょうに。
そうしたらどうするつもりだったわけ?」
どさり、とその場に倒れた男をちらり、と一瞥しただけで今度は目の前にいる竜にと話しかける。
ただ、家族を害しにきた存在を排除することしか頭になかった。
そのあとのことを考えていなかったのも事実。
何ものだ?
というかいま、この目の前の少女は、今、何をした?
ただ、少女の手が男の体に触れた。
それだけで男は今その場に倒れているのがみてとれる。
そしてまた、少女の視線はまっすぐに自分にそそがれている。
ゆえにこそ戸惑いを隠しきれない。
どうやら口調的に自分達竜族の在り方を識っている。
そんな感じをうけなくもない。
しかしそのことはあまり一般的に人間達には知られていないはず。
「そんなことより。ほら。怒りの波動を直接にうけたその余波をどうにかしないと」
戸惑う竜をそのままに、竜の背後にいた小柄な竜のほうにと少女は足をすすめてゆく。
敵意は感じられない。
というか体がなぜか動かない、否、動かせない。
「まったく。あなたもこまった伴侶をもったものね。あなたのほうは平気?」
そんな戸惑いにあふれた竜をそのままに、小柄な竜のほうへ近づき話しかける。
『きゅおぉ……』
あなたは……
伴侶たる彼から発せられる波動から子供を守ることで必死だった。
その力のすべてを子供を守ることにそそいでいた。
そんな中、目の前に現れた一人の少女。
しかしどうみても普通の人、とは到底思えない。
彼女の雰囲気は人のそれ、とは言い難い。
周囲の自然に当たり前のように溶け込んでいる、そんな雰囲気。
頭に血がのぼっている彼のほうは気づいていないようであるが。
「よく頑張ったわね。あなたにまとわりついている『負の気』をとりあえずとり除くわね」
ふわっ。
目の前の少女がそういうと同時に優しい風が体を覆う。
それとともに先ほどまで悩まされていた『負の力』が霧散されていくのを感じ取る。
「子供のほうは大丈夫みたいね。まったく。まだ形勢されていない時期によくない気にあてられたら。
どんな結果になるのかわからないわけじゃないでしょうに。あなた、子供に枷を背負わすきだったわけ?」
いまだに立ちつくしている竜に対して呆れた口調で問いかける。
下手をすれば破壊を好む生体として誕生させかねない愚かな行為。
竜族の誕生は周囲の環境、そして自然界の気の動向による。
自然の気が満ちている箇所で彼らは誕生し、そこそこの自然の力を具現化した存在として誕生する。
両親がたとえば地の力をもっていたとしても、子供を産み育てた箇所が水の加護が多い場所だとすれば、
おのずとその子供は水属性の力をもつ竜として誕生する。
しかしそれは裏を返せば自然の気が乱れているところで誕生したものはその周囲のとおりになる。
つまりは、戦乱の中で負の力に満ちた箇所で生まれた竜は戦乱を好む竜として。
破壊と殺戮の気が充満している中ではそのような竜として。
そしてまた、まだ形勢されていない竜族の幼体は周囲の『気の変化』に敏感。
先ほどのように怒りの波動といったような『破壊』に近い気を間近でうけたとすれば、
その子供が誕生したときにその効果は劇的に表れる。
常に気がたかぶり、理性的に物事を考えることのできない竜として誕生しうることもある。
竜族は生まれながらにそのことを本能的に知っている。
だからこそ母親たる母体となった竜はそれらのことから我が子を必死で守り抜く。
自身の力のすべてをこめて。
子供が健やかに誕生してほしい、とおもう親心はどんな種族でもかわらない。
「そもそも。あんな人間にはいられないようにどうして周囲に相談して結界はってもらってないわけ?」
至極もっともな素朴な疑問が少女の口より発せられる。
普通、子供が生まれる時には周囲の自然と協力して簡易結界もどきを張り巡らせるのが定番。
「…まあ、まだわかいからそこまで気がまわらなかったのかもしれないけど……」
少しは考えてほしいものである。
というか周囲も周囲。
どうしてそのことを注意しなかったのやら。
「あなたたちもどうして注意しなかったわけ?」
その言葉をうけて周囲の木々がざわり、と揺れる。
『ぐるぉ……』
女…言霊使い…か?
はっと我にと戻り、そんな目の前の人間の少女にと問いかける先ほどまで戦闘体勢にあった竜。
言霊使い、と呼ばれる人間がいるのは知っている。
しかし人の中でその存在はまれ。
ほとんどが自然とともにあるエルフなどといった存在に限られている。
そうきいている。
言霊使い。
文字通り、その言葉に力を込めていうことにより相手の存在とわずに意思を疎通させることができるもの。
そしてその言葉に力をこめることにより相手の動きなどを止めることも可能といわれている。
「そんなことより。あなたはそこにすわりなさいっ!そもそも自分の家族を窮地においこんでどうするのよっ!」
いわれて思わずその場に座り込む。
自分が座ろう、とおもったわけではない。
むしろほぼ反射的に座ってしまった自分の行動に驚きを隠しきれないのも事実。
「まだ若いからって言い訳はきかないんだからね?わかってるの?」
相手のいいぶんはまさに正論。
それはわかっている。
わかっているが…どうして人間の少女に説教されなければいけないのか……
竜たる彼にはいまだに理解不能……
どうして。
どうしてこんな。
ただ自分は普通に生活していたのに。
やっと子供ができてこれから家族で生活してゆく。
そんな矢先。
いきなりの襲撃。
目の前にあるのは惨殺された大切な家族。
そして目の前にはいきり立つ人々。
理由は簡単。
ただ、お金というものがほしいがための強硬。
ゆるさない。
ゆるせない。
家族をかえせ。
子供をかえせ。
そして…平和な生活をかえせ。
「……はっ!?」
「目がさめた?」
頭の中がぐるぐると回る。
確かにさっきまで自分は家族をころした人間達に対して……そこまでおもってふと気付く。
「どう?すこしは理解できたかしら?他の生き物も同じような感情をもっている、ということに」
そこまでいわれてようやく意識がはっきりしてくる。
たしか自分はお金ほしさに竜に挑んでいった。
竜族の卵、そしてまたその鱗や牙はかなりの高値で取引される。
まだ年若い竜ならばつけいる隙がある、そうおもって挑んだのは自分。
いきなり家族を害されそうになった相手の気持ちなど微塵も思わなかった。
しかし今の自分かそれがわかる。
「…いま…のは……」
自分の手をゆっくりとみるとそこには見慣れた手。
さきほどまでの自分の手は人あらざるものであったはず。
「あんた…今、この俺に何を……」
考えられるのはただ一つ。
目の前の少女が自分に何かをしかけた、ということ。
「ただ、別の視点から感じる夢をみせただけよ。大地の記憶を元にして、ね」
大地にはこれまでの生の営みにおける様々な記憶が刻まれている。
今、彼が垣間見ていた夢はそのうちのひとつ。
すべての感情、すべての願い、それらすべてを大地はうけとめいきづいている。
「あんた…言霊使い…か?」
他の記憶を見せるなど普通はできない。
だがしかし、一部の能力をもつ者であるならばそれは可能だ、と彼とて聞いたことがある。
もっとも、実際にそれを経験したことがあるかどうかは別として。
「自分の過ちがわかったなら、彼らにきちんとあやまりなさい。
それとも、何?自分の過ちすら認められないようなそんな小さな器しかもちあわけてないわけ?」
先ほどまでの自分ならば相手のことを考えるなどまったくしなかったであろう。
だけども自分はわかってしまった。
否、我が身のことのように経験してしまった、といっても過言ではない。
先ほどまで自分が夢の中にしろ意識の中にしろ。
経験していたのは『自分自身が竜となり人に虐げられ復習する』、というものだったのだから。
人は自分が経験しなければ他人、もしくは他者を思いやることをどうしてもないがしろにしてしまう。
しかし経験を重ねなくても思いやりの心、というものは誰でももちあわせている。
それを表にだすかまた感情のかなたにおいてゆくかは人それぞれ。
ふと起き上がるその視線の先に何やら座りこんだ竜といまだに体を丸くしてかがんでいる竜の姿が目にはいる。
目の前の竜が攻撃してきた理由。
それはいたって簡単。
卵を奪い、そして彼らからうろこや牙を奪い取ろうと、命を断とうとしたにほかならない。
生きるため、という理由ではなくただお金がほしいため。
楽をしたいがため。
お金がほしいのならばまっとうに働けばいい。
また、牙や鱗がほしいのならば話しあいによってもらいうけることも可能。
なのに実力行使、とばかりに『殺す』方法を選んだ。
ここにいる竜の家族は人に害をもたらせたわけではない。
逆をいえば竜が住みついた森や山は生き生きと活性化する。
人に害をもたらした生き物ならば人は『害あるもの』として駆逐しようとする。
しかし…ただ楽しみだけにまた『他者』を殺すもまた人、という種族。
心の持ちようによって人は自然の一部になることも、また自然と反発する生き物になる。
そして…自然と反発してしまった生き物はやがて自ら自滅の道をたどる。
もっとも、そのことに気付かず自滅してゆく輩は少なくない。
「しばらくきちんと話しあいなさい」
話しあえ、といわれても。
どういっていいのかすらわからない。
そもそも、目の前の竜は人間の言葉が話せるのか否なのか。
しかし人の言葉は理解できているであろうことくらいは憶測できる。
「……もうしわけない……」
目の前にいる竜からは先ほどまでの殺意がまったくもって感じられない。
自分が『夢』をみていた間に何があったのかはわからない。
『……私のほうこそ申し訳なかった』
自分がきちんと対策をとっていなかったのがそもそもこの結果を招いた。
相手だけがわるいわけではない。
ゆえにこそ目の前の男性の脳裏にそのまま言葉を念波に変えて話しかける。
しばし、竜と、そして男の話しあいが森の一角において見受けられてゆく……
「しかし…あんた、いったい何なんだ?」
先ほどのことといい、わからないことばかり。
いくら話し合ったとしても完全に和解できるはずもなく。
相手のほうもこれ以上かかわることにより子供に影響がでるのを懸念した。
結果としてそのまま男性を連れて間にはいった少女とともにその場を後にした。
正確にいえばほぼ強制的にその場から連れ出された、といっても過言ではない。
さらさらさら。
目の前にはさらさらと流れる小川。
「私は私。ならあなたは自分が何なのかいえるの?」
そんな男性の言葉にさらっと言い返す。
「まあ、いきなり攻撃をしかけたあなたをこの森の自然が許すはずもないし。
迷いたくなかったら私と一緒に森をでたほうが得策だとおもうけど?」
事実、森の守護ともいえる竜族に手をかけようとした人間を自然が許すはずもなく。
そのままほうっておけば間違いなく男性はこの森で下手をすれば息絶える。
それゆえにこの男性を伴ってとりあえず目的の場所にとやってきているのだが。
「さて、と。これくらいかな?」
目の前で起こったことが理解不能。
少女が大地に手をつけて何やらつぶやいたとおもうと周囲に茂る薬草がいきなり生い茂った。
その光景を目の当たりにしてしばし呆然としつつも少女に語りかけた男性に対し、
さらっといいきっている目の前の少女。
たしかに伝え聞く『言霊使い』の能力は他者の能力などに影響を及ぼす云々、とは聞いたことはある。
そんな唖然としている男性を尻目にさくさくと生い茂った薬草を採取している少女の姿。
「よし。終わりっと。それじゃ、いきましょうか。おじさん」
「おじ…俺はまだ二十代だぞ!?」
たしかに無精ひげなどをはやしているがまだ二十代なのにおじさん呼ばわりされたくはない。
「なら無謀者さん?」
たしかにお金に目がくらんで竜族に挑んだのは事実。
ゆえに、ぐっと思わず言葉をつまらす。
「いい大人なんだから、もう少し思慮深くなることを私としては勧めますけどね」
どうも最近は目先の欲などにおどらされるものが増えているような気がする。
だからこその忠告。
青い瞳に太陽の光に反射するかのような銀色に近い髪の色。
このような髪の色などみたことがない。
だがしかし、目の前の少女の言葉に対して言い返せる材料が男にはない。
「お金が必要ならそれなりに自分でどうにかしないと。
小さな子供でもそれくらいはわかってるとおもうんですけど」
ぐさっ。
さきほどから目の前の少女は耳に痛いことばかりいってくる。
「そういうあんたはいったい何を……」
「みてわかりません?薬草採取です。ギルドの依頼をうけてるんです」
事実、彼女はギルドの依頼をうけてここにきた。
そのことに嘘偽りはない。
「さて。採取完了。それじゃ、森をでましょうか」
「あ…ああ」
何だかはぐらかされたような気もしなくもない。
「…そういや、あんた、名前なんていうんだ?」
今さらながらにそういえば目の前の少女の名前をきいていないことに気付いて問いかける。
「女性に名前をいきなり聞くより、まずさきに自分がなのるのが礼儀ではないですか?
そんな行動をとっていたら永久に伴侶をみつけることすらできませんよ?」
「なっ!大きなお世話だっ!」
いきなり、伴侶、ときたものだ。
たしかに自分には彼女はいない。
しかし目の前のしかも先ほどあったばかりの子供にそんなことをいわれたくはない。
「わめいてないでいきますよ。それともこの森の中で迷って餓死します?」
「なっ!お、おいっ!」
男が叫んでいる最中、そのまますたすたと歩き出す少女をあわてておいかける。
彼とて理解はしている。
いくら鈍い自分でも森全体が入ってきたときと異なり雰囲気がまったく異なっているということくらいはきづいている。
そしておそらくは、目の前の少女のいうとおり、少女とともにいなければ自分は森からでることはできないであろう。
それは直感。
すたすたと先をすすむ少女をあわてて追いかける男の姿が、
森の一角においてしばし見受けられてゆくのであった……
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あとがきもどき:
薫:ん~。なんか支離滅裂?という自覚あり。
男との出会いさんを詳しくかいたら完全にネタバレになるしなぁ。
などとかおもいつつ、割愛しつつ、
それでも少しばかり能力?のことをだしたかったのもあり組み入れたんですけど……
次回でようやく主人公、ディアを中心にいく予定v
それでは、また~♪
2011年2月14日(月)某日
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